東京多摩借地借家人組合

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借家人の家主に対する営業損害の賠償は通常生ずべき損害の範囲の限度

2009年07月09日 | 最高裁と判例集
借家人から家主に対する修繕義務不履行による営業損害の賠償請求について、借家人が損害を避けることができたと考えられる時期以後の損害については認められないとされた事例(最高裁平成21年1月19日判決 判例時報2032号45頁)

(事案)
家主は借家人に対し、平成4年3月5日、賃料月額金20万円、使用目的を店舗として、建物を賃貸した。
平成9年2月12日、本件店舗の床上30センチメートルから50センチメートルまで浸水(本件事故という。)したため、カラオケ店の営業ができなくなった。借家人は家主に対し、修繕を求めたが、家主はこれに応じなかった。

(請求)
借家人は家主に対し、カラオケ営業ができなくなったとして、営業利益相当額の損害賠償の請求をした。
他方、家主は、修繕義務を否定し、賃料不払い等を理由として、建物賃貸借契約を解除し、建物明渡しの請求をした。

(原審名古屋高裁金沢支部判決)
家主の本件建物賃貸借契約解除は無効として、建物明渡請求を棄却するとともに、家主が修繕義務をつくさなかったためカラオケ店の営業ができなかったとして、本件事故の日の1か月後である平成9年3月12日から平成13年8月11日まで4年5か月間の得べかりし営業利益3104万2607円の損害賠償の請求を認めた。家主から上告申立て

(最高裁判決)
これに対し、最高裁は、①本件店舗は老朽化して大規模な改修を必要としていたので、賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続しえたとは考えられないこと、②家主から賃貸借契約解除の意思表示がされて、本件事故から1年7ヶ月経過後に本件損害賠償請求訴訟を起こした時点では営業再開の実現可能性が乏しいものとなっていたこと、③借家人が本件建物以外の場所でカラオケ営業を行うことができないとは考えられないことを理由に、カラオケ店の営業を別の場所で再開させる措置を執ることなく発生した損害の全てを家主に請求することは条理上認められないとし、借家人が別の場所でカラオケ店を再開できたと解される時期以降における損害は通常生ずべき損害に当たらないと判示して、原判決を破棄し、名古屋高等裁判所に差し戻した。

(短評)
本判決は、営業損害の範囲について、民法第416条1項に定める通常生ずべき損害の限度で認めるとしたものであり、借家人に対し厳しいものがあるが、実務上、意義をもつものである。(弁護士 榎本武光)   

(東京借地借家人新聞2009年7月号)


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