東京多摩借地借家人組合

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ペルー人の敷金問題が組合の交渉で早期解決

2006年07月29日 | 敷金と原状回復
ペールー人のTさんは、4月に立川富士見町の賃貸住宅を退去した。退去後の立会いで、クリーニング代と畳の表替えで合計8万2千円との清算書を作成され、その場で了解する旨のサインをした。
 5月に組合に相談に訪れ、早速組合より「日本語もよく分からない状態で、サインした清算書は無効である」と敷金の返還を求めた。
 交渉の過程で、Tさんにも畳1枚に大きなシミをつけ、室内の掃除も不十分な点があったことが分かり、畳全部表替えしても、1枚分以外は家主が負担すべきと説得し、敷金6万円のうち半金3万円を返金してもらうことで和解が成立し、家主から早速Tさんの銀行口座に3万円が振込まれた。退室後の原状回復について、貸主・借主双方において国土交通省や東京都のガイドラインを知らない人が多いようだ。

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原状回復事件における最高裁判決の意義とは

2006年07月29日 | 敷金と原状回復
建物賃貸借で普通に暮らしていて生じた床や壁の汚れ、傷等の所謂「通常損耗」を賃借人の費用負担で行なう「原状回復特約」が有効かどうかで争われた敷金返還請求訴訟で最高裁は、通常損耗の修繕費用を賃借人に負担させる特約は原則として許されないという画期的な判断を示した。

 最高裁の判決は、通常損耗に関して「建物の賃貸借においては賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行なわれている」と指摘し、通常損耗の修繕費用は家賃に含まれるという原則が確認された。

この原則に反して、これらの修繕費用を賃借人に負担させる特約を「原状回復特約」という。賃借人にとっては、この特約は家賃の二重払いを強いるものであり、賃借人には不利益な特約と言える。

最高裁は、この「原状回復特約」が認められる条件として「賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸契約書では明らかではない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」とされた。最高裁は、それらの条件が認められない場合は通常損耗を含む原状回復義務を賃借人に負担させることが出来ないという初判断を示した。

これらに関しては従来からか下級審で通常損耗を含む明文化された「原状回復特約」が成立するためには、①客観的理由の存在が必要②特約による修繕義務を負うことを認識していること③義務負担の意思表示をしていること、以上の要件を具備し、自由意思に基づき契約をしたことが必要であるとしていた。このような意思表示論によって「特約」の成立に制約を設け、これらの要件を充たしていない場合は「特約」の有効性を否定し、その特約を無効とした。(伏見簡裁1995年7月18日判決、伏見簡裁1997年2月25日判決、仙台簡裁1996年11月28日判決、神戸地裁尼崎支部2003年10月31日判決、大阪高裁2003年11月21日判決、大津地裁2004年2月24日判決)。

今回の最高裁の判決は、これら下級審の判例理論を追認したものであるが、更に特約の成立に厳しい制限を加えた例外的な基準を設け、不当な「原状回復特約」による費用負担から賃借人を幅広く救済する効果が期待される。

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