東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

居住の権利を欠落した住生活基本法

2006年06月10日 | 国と東京都の住宅政策
 国の住宅政策の大きな転換を図るための法案である「住生活基本法」が参議院の国土交通委員会で5月30日、6月1日に審議され、自民・公明・民主の賛成多数で可決され、6月2日の参院本会議で可決成立した(共産・社民反対)。
 政府の説明では、住宅政策を「量から質」に切替えるとして、公営住宅の建設促進などに変わって、今年の秋に作成される「住生活基本計画」に既存住宅の耐震化率、バリアフリー化率、省エネ率などの数値目標を定める。
   切り捨てられる公的賃貸住宅
 国会の審議では、質も大事だけれど量は足りているのかとの議論もされ、民間の賃貸住宅を中心に空家が多いといっても、公営住宅の応募者は年々増え既に100万人を超え、大都市では応募倍率は平均数十倍、公共住宅としての空家率は1%以下との実態も明らかになった。
 住宅弱者のためのセーフティネットである公営住宅等公的賃貸住宅については、地域住宅計画の作成の中で地方自治体と政府が協議して決めると政府委員は答弁したが、現実は東京でも大阪でも公営住宅の新規建設は数年前からゼロで、自治体によっては公営住宅を3分の1も切り捨てたところも出るなど、基本法にある「居住の安定の確保のために必要な住宅の供給の促進」といっても、ほとんど実効性のないことが明らかとなった。
    居住の権利を欠落した基本法
 法案に「居住の権利」をなぜ明記しないのか何人かの議員から北側大臣らに質問が出されたが、社会資本整備審議会答申の内容で「居住の権利は、私法上の権利も含め、その内容も多岐にわたるものであり、包括的権利として基本法制に定めることについての国民的コンセンサスが得られているとはいえない」との官僚答弁を繰り返すばかりで、議員の追及も不十分なまま終わった。従って、住生活にとって重要な住居費の負担、居住水準の問題など全く基本法中では明確にされないまま、日本で始めての住宅基本法が制定された。
 それでは、基本法を今になって制定する狙いは何かといえば、住宅・不動産業界からの耐震化による住宅の建替え、バリアフリー化、省エネ化、中古住宅の流通などの支援を通じて巨大な住宅市場づくりにあるのでないだろうか。また、借家居住者にとっては、民間・公共を問わずに居住の権利を守る根幹である法定更新制度と正当事由制度を借家人から奪う「定期借家制度」が普及促進されることも予想され、今後充分に警戒する必要が出てきた。

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

借地借家人の居住や営業の権利を守って31年の

東京多摩借地借家人組合まで 

 042(526)1094



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする