無意識日記
宇多田光 word:i_
 



いや~、やっとCryptopsyの新曲を聴いた。来月19日発売のセルフタイトルアルバムのオープニングチューンだ。掛け値なしに素晴らしい。何が凄いかってバンドが入ってきて開始2秒で「フロ・モーニエだ!」と私に確信させた事だ。バンドのリーダーでありメインソングライターでもあるドラマーの名前である。ラジオ番組でバンド名も曲名も明かさずにいきなり始まった音源のドラムサウンドを聴いて即座に誰が叩いているかを確信させるって並大抵の事じゃない。私にそれを聞き分ける能力があるから…だなんて話はどうでもいい。彼のサウンドの個性が突出しているのだ。そしてその後の曲展開でも彼にしか叩けないフレーズを次々と繰り出していき楽曲を自身の色で貫いてゆく。テクニカルデスメタル/グラインドコアだなんて普通の耳で聴けば雑音に過ぎずそこに個性がどうのと言われてもピンともプンともポンとも来ないだろうが、あるんだから仕方がない。私は一瞬で説得されてしまった。

フロモーニエは現人神である。彼のドラミングの個性はその常軌を逸したスピードでもパワーでもテクニックでもない。図抜けたピュアネスだ。彼は、デスメタルにおけるドラミングを極めるという道を歩む事に一滴の躊躇も持っていない。彼のサウンドを一言で表すなら「全身全霊」。その迷いのなさは確実に音の正確さや切れ味、集中力の表現に凝縮されている。求道者ならではの純粋。最早イデアの世界の住民である。妥協を許さないどころか、妥協という概念がそもそも存在しない。故に私がCryptopsyサウンドに触れる時、まるで魂が浄化されるような感覚に陥る。他のデスメタルバンドでは味わえない感覚である。サウンドスタイル自体は「地獄ってこんな感じなんだろうなぁ」と思わせるに十分な激烈で下品なものなのに、そこで辿り着ける澄んだ神々しさはまるで菩薩に触れているかのよう。実際彼に触れた事があるが、ごつい肉体の醸す理想上のスポーツマンみたいな爽やかさにあてられてしまった。握手してもらってドラムスティックにサインも貰ったぞ。今でもウチの家
宝だ。初来日公演の時だな。確か1999年7月。ノストラダムスの大予言の月だったのだが私にとって彼フロモーニエこそが空から降ってきた大魔王だった。なんだ、懐かしいなおい。


やっぱり不機嫌を全面に押し出すエントリーを書くより、こうやって人を称えている方が座りがよいな無意識日記は。日本人は本当に人を誉めるのが下手だ。私だって上手くはないんだけど、何というか貶すだけなら幾らでも出来てつまらないじゃないですか。人間、出来る事より出来ない事の方が圧倒的に多い。銀メダリストの福原愛を捕まえて泳ぎが下手だサッカーができないアーチェリーも扱えないのか、と糾弾する事は容易い。しかし彼女は卓球が出来るのだ。自らの力で、世界一を今まさに決める舞台に立ち自らの力を示したのである。当たり前の事を言っているぞ。卓球が得意なコについては、卓球の話をすればよい。水泳や蹴球や弓術の話なんぞする必要はない。出来る事の話をしよう。出来た事の話をしよう。至らない点なんていくらでもある。道徳心でも相手を思いやる気持ちでも何でもなく、人を貶すのは単につまらなく、人を称えるのは難しく故に面白い。そうやって何千回も続けてきたのではなかったか。なので血液型の話は止めにするね。ごめんね。

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