無意識日記
宇多田光 word:i_
 



『今夜のことは誰にも言わない』ような関係というと、私などは真っ先に「それぞれ夫や彼氏が居るにも関わらず逢い引きしている百合」を想像してしまうのだが勿論この歌は大変残念ながら『Boy you know what I need』とハッキリ歌っているので少なくとも片方は男性なのである。無念。

(……毎度こんなことばかり言っている執筆者だが、Kindleの漫画ライブラリをみると恋愛モノについては百合より男女のが圧倒的に多い。別にヘテロは嫌いじゃないのだった。面白い作品なら性別は問わない……筈、なんだけど、薔薇やBLが皆無なのはなんでなのやら。意図的に避けてる訳では無いのだけどなぁ。)

どうしてこうもハッキリ性別を特定するような歌詞の書き方をしたのか。まぁ、そもそも、ヒカルは『俺の彼女』に代表されるように「男と女」という枠組み自体をテーマにする事もままあった。デビュー・アルバムの『B&C』だって実在の男女カップル“ボニー&クライド”の事だし、『Beautiful World』でも『Beautiful Boys』について歌っている。「男女の恋愛であること」を明確にする事を厭う事は無いのだ。


とはいえ、『ヒカルパイセンに聞け!2』ではこんな問答もあったな。

── いとさんの質問:パイセンにとっての gender って何ですか?

『俺にとっては、存在しないものかな。
自分の体が女であることにずっと違和感を感じながらここまで来たけど、この回答を考えてて、男の体だったとしても同じくらい違和感感じるんだろうなって思ったぜ。』


ここに至ってジェンダー(主に社会的な性・性別・性差を指す言葉、らしいぞ)を「無い」と言い切ったのだ。勿論、ヒカルにとっては、なのだけど。ことヒトに関して言えば私などは生物学的性も幻想(ただの概念)だと言って憚らないのだが、そこまで極端でないとしても、ヒカルも少し近い考え方をしていると考えてよさそうだ。

そんな中で敢えて、『Time』では『カレシ』、『誰にも言わない』では『boy』という、性別を確定させる単語を使ってきた事に当初は驚きと戸惑いを禁じ得なかったのだが(後者は百合解釈を封じられて落胆したのが大きいんだけどね)、発売から数週間が経過したのでここらで少し落ち着いてこれらの用法を再検討してみようかなと思った次第。と言っても、まだ何も考えてないんだけどね。(笑)今は次の予定も見当たらないし、このテーマもまたゆっくり取り組んで参りましょう。

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1日遅れで「美食探偵 明智五郎」第8話を観ましたよっと。自分が読んだコミックス第6巻までにはない要素が増えているのでテレビドラマオリジナル展開ってことでいいのかな。特に終盤の造りが雑だったけれど、感染症禍の中の制作では同情を禁じ得ないわ。時間の無い中で制約に雁字搦めにされながら収録と演出と編集をしたんだからねぇ。もっと辛口を言ってもいいとこだけど、まぁ、今まできっちり時間をかけて編集してきたんだなということが再確認出来たと言っておきましょうか。オンエアに漕ぎ着けた事自体が喝采ものなのです。


一方で『Time』に目を向けると、エンディングに向かってインスト・バージョンからオリジナル・バージョンに連続させて掛けてもらえる椀飯振る舞いぶり。美味しい所を鱈腹持っていかせてもらってました。美食なだけに。

いやはや、こんな手を使ってきてくれるとはね。連続演奏ですか。その発想はなかったわ。このアイデアには拍手です。最終回に向けて、特に効果的だったと思います。これで当初の想定通り(?)、次回の最後の最後で『返らない 返らない』の次の歌詞が流れる期待が高まりましたよっと。


今回のインスト・バージョンは「美食探偵 明智五郎」のサントラに収録されているバージョンで、ダウンロード販売もストリーミング配信もあるので一度聴いてみると宜しいかと。あたしの世代の言葉で言えば「ミニマル風アレンジ」ってヤツで(サティ〜ケージ〜ライヒ〜久石譲みたいな路線ね)、坂東さんは一通り学んでいるのだろうけど、彼自身は何を源泉にこういうアレンジを思いついたんだろうねぇ。博識そう。イントロでアナログ時計のクリック音を使ってるからややレトロを狙ったのだろうかな。

ああやってリズムを変えてくれると、元々の『Time』のメロディのニュアンスでリズムに依拠してる部分が何処なのかがわかりやすく呈示されるから面白い。当然、翻って、リズムに依拠しないメロディ独特の風味も浮き彫りになるから、他者にリアレンジして貰うのは楽しいぜ。

どうせなら、配信シングル限定とはいえ、ヒカルの『Time』とカップリングでリリースすればよかったのにねぇ。或いは、スプリット・シングルってやつか。共同名義の。最近のシングルは昔楽しませてもらってたリミックス・バージョンやカラオケ・バージョンがないのが不満と言えば不満なのだが、公式からこのようなリリースがあるのは大歓迎。だがこうやってサントラの片隅に収録されるだけではなかなか注目を浴びれない。“レコード会社が別”という大きな難関もあるにはあるんだけど、そこらへん柔軟に対応した方がお互いの為になるんじゃないですかね。色々と「そうも言っていられない状況」になっていくんだろうし音楽業界も。いや特に意味深じゃなく、売れるものは売りましょうよってだけなんだけどね。ご検討を宜しくお願いしたい所でございます。

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