ヒカルの歌うカバーソングが絶品なのは論を待たない。わざわざ言うのもダルいくらいにどれもこれもが素晴らしい。故に井上陽水トリビュートもなんら心配はしていない。
心配するとしたら、アレンジメントに凝りすぎて折角の歌唱力が活かされない方向性に行くことだ。いい例が『Hymne à l'amour ~愛のアンセム~』で、"Spain"とのマッシュアップというアイディア自体は絶品だったが、そういうのに興味のない人には『WILD LIFE』でのピアノ1本でシンプルに歌ったバージョンの方がいいだろう。ここにミスマッチがあると思うのだ。
ヒカルがカバーを歌う場合、アレンジに凝り過ぎない方がウケがいい。凝らなくても十分ウケると言いますか。
他にも例えば『MTV UNPLUGGED』での"With Or Without You"なんかはどうだろう。メイキングを見るとこの曲は本当に最後の最後に捻じ込んだ為ろくにアレンジもリハーサルもしていない。だが勿論ファンにとっては今聴いてもエヴァーグリーンな名パフォーマンスである。特にカバーの場合、ヒカルが丹精込めて作り込まなくても我々の心に深く刻み込まれる名演が生まれ得るのだ。
オリジナル曲は別にいい。中途半端な曲を発表するくらいならインターバルを十二分にとって水準の高さを保証し続ける。そういうレピュテーション戦略は決して間違っちゃいない。
しかし、カバーは違う。アレンジはおろか全く音作りをしていないカラオケですら聴いた人を感動させるのだ。ヒカルが歌えばもう名演なのである。
ならば。例えば一回二週間くらいセッションをして大して凝ったアレンジもせずほぼカラオケ状態でヒカルがカバーソングを10曲くらい録音してストックしておくのはどうだろう。トラックのクォリティが低いので宇多田ヒカル名義は使わずバンド名義とかプロジェクト名義とか─ULTRA SUPER KUMA POWERSとかなんでもいいよ(笑)、そういう名義を使って、ヒカルの情報が途切れる時期にでもサクッと配信しては貰えないだろうか。市場云々は一切考えない、ただただファンとしてヒカルのパフォーマンスに触れたいが為の提案なのですが。駄目かねぇ?
| Trackback ( 0 )
|