無意識日記
宇多田光 word:i_
 



あらあら、Can't Wait 'Til ChristmasのPC配信がゴールド認定されたのか。めでたい。クリスマスシーズンを過ぎても売れ続けていたとは流石の楽曲の素晴らしさというべきか。

今回、SC2のプロモーションでやや心残りだったのが、シングルカットがなかったこと。これは"制作行程上の都合で"そうなったらしく、多分折りが合えば従来の意味でのシングルカットかどうかは兎も角なんらかの集中的なプロモーションがあったのかなと思い返してしまう。

もしかしたら、シングルコレクションとかベストとかいう話を耳にしただけで、新曲の存在を知らない層も一定以上居るかもしれない。映画もそんなに話題になってないし、GBHはUTUBEあってこそだからアクセスしない人は知らないんじゃないか。

で、この度ゴールド認定されたCWTCだが、シングルカットしなかったんだからどうせなら光が「金輪際クリスマスソングは作りません!」と宣言してしまえば面白かったのではないか。なまじっか次があると思うから楽曲が"古びる"のであって、「宇多田ヒカルのクリスマスソングはこの曲!」というのを固定化してしまえば、スタンダードナンバーとして生き始めるのではないか。

勿論、そんなわざとらしさを漂わせながら楽曲を"スタンダード"にしようだなんてうまくいく気配もなく、定番曲は自然に定番になってゆくのだから放っておけばよいのだけど、ポテンシャルがあるのにみすみす埋もれさせるのも芸がない。このまま"2010年冬の曲"にとどまってしまうのは何とも惜しい。

曲の出来としては、何度も触れてきたように、そうだな、大体Flavor Of Lifeくらいの評価は得てよいと思うが、あれは超大人気ドラマのとてもオイシイ場面で使われるという最高のファーストインプレッションがあったから爆発的なダウンロードを達成した訳で、今更そんな瞬発力は期待できない。

まぁそんなことを言い始めたら光の曲なんて世間的には"埋もれた名曲"ばかりなんだからアレもコレもとなるのだが、CWTCは希少な季節性のある曲で、しかも光の場合今後毎年クリスマスソングを作るなんて展開はほぼ絶対にないから、、、い、いや、そういう所の"気が変わる"のが人間活動かもしれない訳か…。

まぁいちばん手っ取り早いのはぼくはくま同様NHKみんなのうたに採用されてしまうことだろう。あの番組の本当の影響力が発揮されるのは10年後20年後30年後、その頃子供だった人たちが大人になって「あのくまのおうたって宇多田ヒカルだったんだ」と云われ始める時だ。今、そういうロングパスを出せる媒体ってなかなか見あたらない。

そう考えると、山下達郎のクリスマスイヴってなんであんなに毎年売れ続けているんだろう。光の場合、次から次へと新曲を出してしまうせいで、しかもそれが打率10割な出来映えなせいで、なかなか"次のスタンダードナンバー"が出来てこないのだが、こうやって人間活動に入ることでまずEVAと結びついたBeautiful Worldと、この季節性のあるCan't Wait 'Til Christmasがうまい具合に"使い回されて"スタンダードナンバーになっていってくれないかなぁと淡い期待を抱いてしたりもするのでした。

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無料絶版漫画サイトJcomiで16年前週間少年ジャンプで連載されていた「密リターンズ」が公開されていた。いやぁ懐かしい。主催者もこの作品は随分とお気に入りの様子で、今読み返すと成る程、自分の作品にオマージュ(或いは同じルーツ)を反映させたりしているんだなぁ。

こちらもいち読者として、16年経ってから同じ作品を読むと感想が随分と違っていて少々吃驚。昔は設定の稚拙さや説明不足、伏線の物足りなさに登場人物の独りよがりな思考回路、ご都合主義などあまりよくない印象をもっていた側面も、いや今読んでもそれはそれで同じ感想なのだが、随分と"作者の意図を斟酌して"読めるようになった。

昔は減点法で読んでいたのが、今は"あぁ、こういうことが云いたいのか、ならばあれとこれを組み合わせてこう持ってきて…でも確かに週刊連載だとそこまで細かく描き込む余裕なんかないよねぇ"なんていう風に作り手側の事情なんかを織り込んで読むようになると、この作品の魅力の核が瞬時に解るようになり、詰まるところ「あれ、このマンガこんなに面白かったっけ?」という感想になった。

減点法で物事をみていると、対象の魅力の存在に気がつかずに、或いは気づいていてもよく触れてみもせずに通り過ぎてしまうことになる。一旦魅力の核に触れてしまうと、それを伝達する表現の至らなさはさほど気にならなくなる。揚げ足をとられる、というのは単純に魅力が伝わっていないのである。

ヒカルのナマ歌もまた、その減点法に照らし合わされて評価されてきた。ミュージシャンの場合、作り込んで重ね込んだスタジオトラックという"満点のお手本"がある為、減点法による比較が容易である為、揚げ足をとる方もやりやすい。何回も歌い直してベストテイクを繋ぎ合わせれるスタジオバージョンみたいに精微な完成度を一発ナマ本番で達成するのは本当に難しい。というか無理がある。

しかし、光はIn The Flesh、Wild Lifeでその無理をかなり実現してしまった。その出来映えはDVDを観た人ならお分かりではないだろうか。モチロン、この盤も2日間のベストテイク集なので純粋なライブではないのだが、実際にナマで観た人に感想を訊けば、現場でもこうだったよと云えるだろうことは想像に難くない。

恐らく今後そういったポジティブな感想が広がってゆくと予想するが、光の歌唱力の成長とともに、受け手側の光の音楽に対する理解度や愛着がじんわりと広がっている、ということもあるのかもしれない。それによって減点法による採点が緩くなるということはなくとも、音楽、楽曲自体への愛着が年月と共に醸造されてきて好意的な評価に繋がってゆくということも、あるかもしれない。宇多田光はますます深く愛されてゆくのだ。

とはいっても、愛情が深くなればなるほど減点法が厳しくなっていってスタジオバージョンを愛する余りライブバージョンの崩し方は憎さ百倍、なんてこともあるから難しいんだけどね。

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