びっくり館の殺人 (講談社ノベルス) | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
本屋でなにげなく手に取ったミステリー『迷路館の殺人』に、三知也は十数年前の記憶を蘇らせる……病弱な友人が祖父と二人でひっそりと暮らしていた洋館びっくり館と、そこで起こった一つの殺人事件の記憶を……
「子供とかつて子供だった大人たちへ」と題されて作られたシリーズ、講談社ミステリーランドで出版された館シリーズ第八作目。
館シリーズではあるが、作品のおもむきとしては怪奇ホラーミステリーであった囁きシリーズ三部作のほうに近い。そして囁きシリーズの感想が「綾辻はロジックの人だから幻想・怪奇・耽美は本当に下手だなー」だった自分としては、十数年を経た今作も同じだといわざるを得ない。
いやホント、楳図かずおや谷山浩子の熱烈なファンだったりと、趣味としてはかなりそっちの方向の人らしいんだけど、もとの性格のせいなのか、ちっともその怪奇の世界にひきこまれる感じがないんだよね。もう不思議なくらいに。悪趣味で冷徹なスプラッタはうまいんだけどね……
ストーリー自体も、物語としてもミステリーとしても「うんまあ普通にそういう流れだろうね」と思っていたそのまんまのことがオチになっていて、「え、どこで騙すつもりだったの?」と逆に悩んでしまった。
結局、綾辻作品はデビュー作の『十角館の殺人』がそうであるように、登場人物の内面の機微に踏み込まない作品のほうが面白いんだよなー、と思ってしまった。そういう意味では、この人ほど本格ミステリー作家らしい人もいないんだけどなー。
巻末で道尾秀介とネタバレ対談しているんだけど、道尾秀介の読み解き方が好意的すぎて笑える次元だった。こ、この作品をそこまで好意的に読むのか……綾辻愛しすぎだろ……むしろ聞いてる綾辻が若干ひいてるじゃん……
でもネタバレ対談したり、それをわざわざ袋とじにしたり、なんだか綾辻のまわりの時空は九〇年前後の新本格時代でとまっていて、なんだか懐かしくていい感じ。
つうか長すぎるからつみっぱなしの『暗黒館の殺人』もいいかげんに読まなくちゃな……でもめんどいんだよな、長いから……
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