月は西の山の端に。イタリアの漁村を思わせるような、雑賀崎漁港の漁師たちの住む丘の、白くて角張った家々。人は早くも防波堤のあちこちで釣りを。鳥はピイヒヨロピイヒヨロと啼きながら港の上空を横切りながらどこかへ向かう。波は穏やか。土手の草木も揺れない。殺生と言えば殺生。古女房も大愚も魚を食べるためにここに来た。