宮地神仙道

「邪しき道に惑うなく わが墾道を直登双手
または 水位先生の御膝にかけて祈り奉れ。つとめよや。」(清水宗徳)

「シンデレラと灰かぶり」

2008年09月01日 | Weblog
(画像はクリックされましたら拡大します。)

90年代に某誌で書かれた、「シンデレラ」に関するコラムです。

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【魔法使いの正体は?】

シンデレラと言うと、どうもシンデレラストーリー、すなわち
棚からボタモチが落ちてくるように、幸福がやって来る
事を想像してしまいます。
これはディズニー映画のイメージが、あまりに強いから
でしょうか。
ディズニーのシンデレラは、「ペロー童話集」の「サンドリヨン」
または「小さなガラスの靴」をもとに脚色したのです。

ペローはその最後に、「教訓」として、「善意」が何よりも
大切とお説教しています。
タナボタよりもマシかもしれませんが、善意が幸福につながる
という解釈は、どうも腑に落ちない所があると思います。

ペローのシンデレラは、あまりにもカマトト娘で嫌になってきます。
そこで今回は、網一つの別の隠されたシンデレラに取り組んで
みましょう。

実はグリム童話にもシンデレラはあるのです。
ただし「灰かぶり」という題ですので、ちょっと気がつきにくく、
まさに灰の中に埋もれたままになっています。
しかしこれを掘り起こしてみると、随分とイメージが違うのに
驚かされてしまいます。

グリム版シンデレラは、まず第一に仙女(魔法使い)なんて
出てきやしません。
更に、ガラスの靴という華奢なものではなく、堂々と黄金の
靴になっています。
それに最後の結末が凄まじい限りです。

自分をいじめた2人の姉を引き立ててやるなどという、美しい
話しにはなっていません。
姉達は小鳥に目玉を突き出されてしまい、一生盲目で
暮らす事になります。

何だか恐ろしい事になってきました。
でも、私達が本当のシンデレラ・サクセス・ストーリーを
実現するには、この人生の奥底の秘密に目を据えたグリムの
シンデレラを読み解くほかない事がわかるでしょう。

【憧れの心と絶え間ない努力】

「灰かぶり」では、仙女の代わりにハシバミの木と小鳥(家鳩、
山鳩、青空の下の小鳥)が登場します。
この木はもと小さな小枝だったのを、灰かぶりが毎日の
苦労の涙で育て、立派に成長させたものです。
この木には小鳥達が群がり、灰かぶりを助けてくれます。

仙女のような都合のよい存在と違い、木は彼女の積んだ
苦労の量を象徴しています。
では小鳥は何の象徴でしょう。

灰かぶりは、姉達が暖炉の灰の中にぶちまけた豆を
何度も拾わされます。
だから灰かぶりというのです。
ですから彼女は豆を拾うのがとても上手になりました。
まるで鳩のように。
小鳥は、このような類の無数の苦労の結果として得た
能力、手腕を象徴しています。

さて、シンデレラと灰かぶりの性格が、まるで違う事に
気づいたでしょうか。
そう、灰かぶりは、ただしおらしく耐えて待っていれば、
やがて王子様が現れる……と信じているような娘では
ありません。
豆を一粒一粒拾うような苦労の涙を、自分の肥やしに
するように持っていきます。

王子様が花嫁を探すための饗宴があると聞けば、継母に
「私も連れて行って」としきりにせがみます。
独り置いていかれると、ハシバミの木に頼んで、素晴らしい
着物と靴を出してもらいます。
ハシバミの木がお母さんのお墓の側にあるのを考えると、
着物や宝石や靴は、死んだお母さんが成長する娘に密かに
残しておいたものだと解釈できるでしょう。
それを灰かぶりは、これまた誰にも知らせずに隠しておいた
のです。
これは密かに憧れの気持ちを保つ事を意味します。

灰かぶりは、まるで他国の王女様のように変身し、饗宴に
臨みます。
もちろんカボチャの馬車なんか来ません。
自らお城に乗り込んだのです。
このように灰かぶりは、小さい時からの憧れを温め続け、
絶え間ない努力で困難を乗り切ってきました。

ではディズニーの作品は単なる夢物語だったのかと、がっかり
するかもしれません。
とは言え、ディズニーにはディズニーなりの重要な役割があります。
一度ディズニーに目くらませられないと、「灰かぶり」の重大な
意義が強調されないではありませんか。

実際灰の中にぶちまけられた豆を一粒一粒拾うような眼が
なければ、「灰かぶり」をグリム童話から発見する事は出来ません。
また読んでも目からウロコが落ちるような体験を得る事もない
でしょう。

実は、最後のシーンの2人の姉が目玉を突き出されるというのは、
とても意味深いのです。
意地悪をしたり、他人の幸福に便乗したりする人間にはバチが
当たる……それだけではありません。
姉達の眼は、真実を見抜けない節穴だったのです。

私達もまた、人生の奥底の秘密に眼をそむけたまま、
シンデレラの夢に包まれて一生を台無しにしてしまう瀬戸際
だと言えます。

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この「灰かぶり」については、個人的に、人の魔法や神秘学の
世界における、真の意味での成長・進歩過程に重なって見えて
しまいます。

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