ZAMACのフォト日誌

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出羽三山と写真家

2013-12-30 22:25:31 | うんちく・小ネタ

 普段は一つのテレビ番組を全部見ることなどほとんどないのに、今日は食い入るようにじっくり見た。2013年の年末にだ。
 番組名は「写真家たちの日本紀行」特別編という。CANONが4年半にわたり提供し、昨年終了した人気番組のスペシャル版なのだ。12月21日放送の風景写真家「米美智子」に続いて、今回は二回目で「石橋睦美(いしばしむつみ)」だ。

 「祈りの情景 - 山形・庄内の旅」というテーマに惹かれた。内容の柱はオフシーズンの「出羽三山」で、雪風景を求めてとある。ZAMACが求める心象風景と重なるので、この番組が気になって仕方がなかった。その期待のキーワードは「出羽三山」「田麦俣・多層民家」「雪」「祈りの神域」……そして「風景写真家の月山の見方」は、とワクワクしてきた。

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今日の新聞の全面広告.(2013.12.30)

 以前、このブログで「内藤正敏先生」のことを書いた。その先生は民俗学の立場で切り込む大御所写真家だ。一方、風景写真をやる人なら知らない人はいないと思うが、現役バリバリの石橋睦美はどんな「目」で月山山域を撮るのだろうか、というところが私にとって重要なポイントだ。

 初冬の日本海側の天気は悪い。石橋は何度も雪を乞うことになるが、ついにイメージした風景になったと喜んだ。そして石橋が撮った作品の、中でもZAMACが気に入った三枚を選んでみた。

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 (撮影:石橋睦美)

 待ちに待った雪の日の夜。出羽三山神社本殿にかかった霧と雪が、幻想的な世界を創り出したという。三山の神が本当にいるように感じる。

 また下は、六十里越えをとおる出羽三山参りの人々の中継地となった、田麦俣集落に残る重文「田麦俣・多層民家」の撮影だ。この民家の隣家で管理人をしている渋谷さんの説明を聞いたあと、家屋内の神棚、蚕室、などを精力的に切り撮っていた。降る雪の中を外に出て、当然萱葺きの遠藤家全体も収めている。

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  (撮影:石橋睦美)

 兜づくりの「多層民家・遠藤家」では囲炉裏が赤々と燃え盛り、石橋を迎えてくれたが、約170年も前の建物だという。放送では触れていないが森敦(もりあつし)の、芥川賞「月山」のおどろおどろしいあの物語が目の前にあるようだ。ZAMACが月山や出羽三山に惹かれるのはそんなことも影響していると思う。

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 (撮影:石橋睦美)

 これらを知れば知るほど写真としては、暗くローキーなものになる。そこを風景写真家の石橋睦美(最近は信仰・山域を主眼にしているが)がどのように撮るのかというのが冒頭の興味だ。

 内藤先生の作品は信仰の奥の奥まで入り込むので、霊界の世界そのものように思える。対して石橋はやはり”きれい”だ。神域に深すぎず近づき、庶民の神を敬い信じて、生活の規範としている生活者を見つめる感じだ。

 作家による作品の違いはよくわかる。結局自分が思う、イメージする、それが先ず必要だと言うことのようだ。そこに山があるから登るのではなく、イメージなくして撮影活動はないという、当たり前のことを再確認した番組だった。年末のひと時、何かいい締めくくりになった気がしてうれしい。
 来年は月山周辺に限らず、丁寧に考えながら撮ってみたいものだ。

てい

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  < メモ >  写真の左下は石橋の撮影データだ。カメラはすべてフルサイズのEOS-6D。前回放送の米美智子もそうだがISOは臨機応変に大幅に変えて撮っている。風景写真といってもf(焦点距離)長の割りにF値は小さく、20以上は滅多にないことに気づいた。

 なお、3枚の写真はCANONのホームページから転載した。


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