ウクレレとSwing(スヰング)音盤

Swing Time in Hawaii (1996) / Anita O'day & Herb Ohta


この年、オータサンはM&Hから二枚のアルバムをリリースしている。一枚は通常のオータサン自身のアルバムで、もう一枚は本作、50年代から60年代に全盛を誇った(1958年の映画「真夏の夜のジャズ」 での歌唱シーンも印象的だった)アメリカ本土のジャズ歌手アニタ・オデイとの『共演』盤(後述)であった。

ライナーノーツによればこの時期アニタはハワイ諸島をコンサート・ツアーで回る際はオータサンのバンドと一緒に回っていたようで、そこからこの共演盤が作られたようだ。

01.Give Me The Simple Life
02.It Might As Well Be Spring
03.Let's Fall In Love
04.My Foolish Heart
05.Undecided
06.I Hear A Rhapsody
07.Yesterday / Yesterdays
08.The Song Is You
09.S'Posin"
10.Autumn Leaves

共演盤というとアニタの歌の間奏にオータサンがウクレレを弾くのかと思いきや、実は本質的な意味でのそうした「共演」は1曲も無く、一曲飛びにアニタ・オデイの曲、オータサンの曲が一枚のアルバム中にそれぞれ収録されている変則的な構成となっている。アニタ・オデイの楽曲ではオータサンは演奏しておらず、ピアノやサックスをフィーチャした別のコンボを従えてのジャズボーカルである。

録音はいつものAudio Resource。今回ライル・リッツ(b)の参加は3曲のみ(2,8,10)で、ギターにジミー・フナイ、ドラムにノエル・オキモト、オルガンにPaul Markといういつものオータサンの布陣で3曲を演奏。それ以外の大半の曲は地元ホノルルを拠点とするジャズ系ベーシストのブルース・ハマダ(b)の他は、ニュージャージー出身のBob Albanese (Piano)、シカゴ出身で一時期ハワイやシアトルでも活動歴のあるTom Artwick(Tenor Sax)らアメリカ本土ジャズ畑のメンバーが別途に集められ、アニタの全曲でバックを務める他、サックス抜きの編成でオータサンとも2曲を演奏。

本作でアニタ・オデイとは本当の意味で「共演」とはならずちょっと残念な気もするが、オータサン参加のトラックに限ってみれば、3曲がオルガン・ジャズ、2曲がピアノ・ジャズという二通りの編成で楽しめるゴキゲンなウクレレ・ジャズが本作の聴きもの。ハワイアン調なジャケット・デザインに反して、収録内容は全曲ストレートなジャズ・アルバムとなっている。オータサンのウクレレの音色もとても良い。

なお、本作の4年後となる2000年には、別のジャズ界の大物プレーヤーがオータサンと実に楽し気な演奏により完全な共演を果たし、ファンは溜飲を下げるのであった。それが誰だったかは、後日のお楽しみ。

なお2000年代にビクターが「Swing Time」というM&Hの旧音源をコンパイルしたCDをリリースするが、本作とは別物である。



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