岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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日本歌人クラブ定期総会

2015年05月24日 23時59分59秒 | 短歌の周辺
「日本歌人クラブ 定期総会」 於)明治神宮参集殿

 日本歌人クラブは毎年5月に総会を開く。歌人の親睦団体だが、総会での講演や親睦会では毎年刺激を受けている。このブログにの記事をもとに『齋藤茂吉と佐藤佐太郎』を刊行した。そのブログの最初の記事のヒントは、日本歌人クラブの南関東大会で得た。「寺山修司論」を書くヒントもそうだ。

 しかも毎年出会いがある。今年は長野で『ヒムロ』を刊行している歌人と会った。『ヒムロ』は島木赤彦が創刊した雑誌で、『アララギ』に合流したが、戦後に復刊された。この歌人からは島木赤彦について、どの著作にも書かれていない事実を聞かされた。これは今後の島木赤彦の作品の理解に役立てたい。

 総会では会務報告がある。一年の活動報告、会計報告、事業計画、予算案が提案される。それと共に、各種の表彰が行われる。

 日本歌人クラブ大賞、日本歌人クラブ賞、日本歌人クラブ新人賞、日本歌人クラブ評論賞。このうち歌人クラブ大賞は尾崎左永子が受賞した。尾崎は僕の恩師だ。「星座かまくら歌会」の花束と僕個人で薔薇の一輪を差し上げた。

 新人賞は服部真理子だったが、最終選考に、このブログで書評を書いた、『同じはやさで雪は降る』の著者の中畑智江が残ったそうだ。歌人クラブ評論賞もこのブログの書評で書いた『現代秀歌』の著者の永田和宏が受賞した。ともに注目していたので、わがことの様に嬉しかった。

 公演は関川夏生の「明治後半期における職業としての文芸」だった。

 印刷技術の発達とともに、印刷資本主義が成立したという。寛政年間からという。経済学でいうと、これは誤り。日本の資本主義は日清戦争後に成立した。この「印刷資本主義」は比喩で、出版商業文化と呼ぶべきだろう。

 この出版商業文化は1970年代が全盛、1980年代には雑誌が全盛。1990年代のバブル崩壊ともに、文学産業は衰退していったという。活字文化の衰退、出版不況の現状を言ったのだろう。

 これには異論もある。価値のある書籍は売れている。無駄な書籍が売れなくなってきたのだろう。その意味で、作家には質の高い文学作品が求められると思う。

 関川は、文学の地盤沈下のことも考えているという。関川は悲観的なことを言ったが、僕は違う感触を持っている。文学の沈下の原因は、批評の不在にあると思う。短歌でも批評が確立すれば、質の高くない作品が評価され、売れることはないだろう。

 尾崎の弟子と思われたのだろう。(僕は正式に弟子と言われたことはない。私淑していることになる。)初対面の歌人数人「岩田さん」とから声を掛けられた。

 バラ一輪の贈呈は「かわいいことをする」と何人かに笑われたと後日聞いた。「かわいい」と言われて喜ぶ歳ではないが。

 様々あったが、例年にも増して身近に感じる定期大会だった。




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