UGUG・GGIのかしこばか日記 

びわ湖畔を彷徨する独居性誇大妄想性イチャモン性前期高齢者の独白

コロナな日々:わたし、かつて人間がつくりだした狂気の伝染病と闘ったことがあるの、と語るマリリン

2020-04-22 01:11:37 | 日記
先日、買い物のついでに不要不急の典型である散歩みたいなことをしておりました。京阪電鉄石坂線さんの駅をすこし下ったところにある神社の向かい側、美容院の角をまがろうとしましたら、上の方から明るい女性の声がしました。

あら、あなた、GGIさんでしょう、おひさぶりね!お元気ですか!

見上げましたら美容院の窓越しにマリリン・モンローが顔をだしていました。

今日の写真は美容院のマリリンさんを撮ったものです。マリリンさんを目にするのは久しぶりの方もおおいのでないかと思います。どうかクリックしてご覧くださいませ

やあ、マリリン、ほんとうに久しぶりだなあ、元気は元気なのだけれど、いまはコロナちゃんが世界的に大流行、日本でもはやっていてタイヘンなんですよ

うわさは私も聞いています。でもね、いつの時代でも人類が油断しているとヘンな病気がはやるのよ。私も、むかし、米国で厄介な病気が大流行したとき懸命に闘ったことがあるの・・・

米国でやっかいな病気って?

GGIの年代の方ならご存知のはずよ、「マッカーシズム」という怖ろしい狂気の伝染気よ、「マッカーシー旋風」と言われたぐらい猛威をふるったの。これはコロナちゃんのような生物学的な病気ではなく、社会的な病気、「冷戦」という時代が作り出した狂気という名の病、怖ろしい伝染病・・・

知っています、その後、この米国の厄病が日本の戦後にも後大きな影響を与えたのでよく記憶しています。マッカーシーという上院議員が始めてあっという間に米国全土に広がったいわゆるレッドパージ、「赤狩り」のことでしょう・・・・

そのとおり、私がハリウッドで大活躍していた1950年代のことです。バイキンやウイルスによる病気も怖いけど、この社会的な疫病は、人々を、社会を分断し、みんなが疑心暗疑になって他人を疑ったり密告したりという、考えようによってはコロナちゃんなんかよりず~っと恐い病気なの・・・コロナちゃんの流行は始まってまだ一年も経っていないけれど、この疫病はおよそ十年間も続いたの・・・

1950年代といえば、マリリンがアメリカ資本主義の西日のなかに燦然と輝いていたころですね

まあ、GGIさん、なんてキザなことをおっしゃるの!

いや、これは日本で発行されたあなたの写真集の紹介文に書かれていたセリフなんです

でも、そうかもしれない・・・というのは60年代に入ってまもなく私が亡くなって、つづいて私が好きだったケネディ兄弟が暗殺され、そのあとアメリカは泥沼のベトナム戦争に足をとられて・・・その後いまに至るまで、アメリカは延々を勝てない戦争を続けている・・・だから50年代はアメリカ資本主義が西日の輝きを放っていた時代と言えるかしれないわね・・・

あのマッカーシズムというのはソ連との間の冷戦が激化していたことが原因になったの?

おそらくそうでしょうね。原因というよりは、きっかけというほうが正確かもしれません。1950年に朝鮮戦争が勃発したことや、1949年に中国に共産党による政権が生まれたことも影響しているかもしれません。でもそのような外的要因というよりは、何かアメリカ社会の奥深くにそれまで潜んでいた質の悪い病巣のようなものが冷戦を機に一気に噴き出た、というのが事実にちかいのではないかしら・・・

マッカーシーという共和党の上院議員が共産主義を目の敵、諸悪の根源と決めつけて始めた運動、国会内に「非米活動委員会」というのをつくって自分が「アカ」と見なした人々、共産主義や社会主義に同調していると見なした人物など、要するに自分が気に入らない、米国の為にならないと見なした人物を、次から次に喚問して証言を求めたの。ジャーナリスト映画監督・俳優といったハリウッドの映画人、作家、外交官、学者など、いろいろな人々が次々に標的にされました・・・マッカーシズムと言うのは、いわば「魔女狩り」だったのです、中世の話ではないのよ、二十世紀の魔女狩りが全米を席巻、まさにパンデミック・・・

たとえば、ヒットラーをモデルにした「独裁者」という優れた映画を作ったチャップリンは二次大戦中、ヨーロッパから逃れて米国で活動していたのですが、マッカーシーに狙われ、追放同然、米国を去りました。仕事を失ったり、追い詰められて自殺したりする人も少なからずいました

チャップリン以外にも、ジョン・ヒューストン、ウィリアム・ワイラーなど数多くの映画関係者が狙われたのです。非米活動委員会への召喚や証言を拒否した10人の映画人、いわゆる「ハリウッド・テン」は、議会侮辱罪で訴追され有罪判決を下され、業界から追放されたのです。監督や俳優のなかにはマッカーシズムに強く反対した人たちもたくさんいたのですが、一方、「赤狩り」を支持し、告発に協力する有名な俳優たちもいたのです。後に大統領になったレーガンもその一人、まさに「アメリカの悲劇」(セオドア・ドライサ―の小説の題名)でした。

マリリン、そういえば思い出しました。経済学者の都留重人氏と親交のあった、日本生まれのカナダの外交官、優れた歴史家でもあり日本史についての著作もあるハーバート・ノーマンも、マッカーシーの標的にされました。カナダ政府は彼を擁護したのですが、しだいに追い詰められ、後にエジプト大使を務めているときに飛び降り自殺をしていますね・・・

私の夫であった劇作家のアーサー・ミラーも標的にされたのです。

知ってます。ミラーさんの代表作は「セールスマンの死」(1949年)、「アメリカン・ドリーム」の陰を描いたともいえる名作です・・・後にエリア・カザンにより映画化されピューリツア賞をもらってますね。

私は、あのとき、夫のために闘ったのです。彼は非米活動委員会での証言を拒否、徹底して抵抗したために法廷侮辱罪で有罪とされたのです。私は裁判費用を工面し、懸命に彼を支えました。夫が裁判で勝つことを疑ったことはありません。だって、私は独立宣言を起草したジェファーソンの著作を読んでいたからです。憲法に従えば、彼が負けるとは考えられなかったからです。「マッカーシーさんをはじめとした非米活動委員会のみなさん、みなさんはみんなみんな、おバカさんね」と私は笑い飛ばしてやりました。私には全米のファンがついていました。こわいものなしです。マリリン、よく言ったと拍手喝采でした。心ある人は、みんな心の中で、魔女狩りなんて、こんな馬鹿げたこと、もうたくさんだと思っていたのです。

マリリン、そうなのか、君がマッカーシズムと懸命に闘っていたとはちっとも知らなかったなあ、君はほんとうにえらいなあ・・・ジェファーソンを読んでいたのか・・・さすが読書家マリリンだなあ・・・あっ、そうだ、読書家のマリリンならカミュの「ペスト」という小説、よんだことあるでしょう・・・アルジェリアのオランを舞台にした、都市封鎖された町でペストと懸命に闘う医師を主人公にした小説。カミュは二次大戦中レジスタンスに加わっていたという経歴の持ち主です、だから「ペスト」はナチス・ドイツ占領下の不条理に満ちたフランスの社会の暗喩である、という説があるのです。その説が正しいとすると、マリリンはマッカーシズムという名の「ペスト」と闘ったとも言えるのです!

まあ・・・少し大げさね、そんなに無理しておほめくださらなくても結構よ

いや、ムリなんかしていません、ほんとうのことです・・・・

それはともかく、私が非米活動委員会のことをおバカさん呼ばわりしてから間もなく、マッカーシズムはしだいに下火になっていったの、大衆に支えられて私がヘンリーを懸命に支えたことが世論を変え、マッカーシズムを終焉に向かわせたなどという人もいるけれど、それはちょっとほめ過ぎよね。結局、私ではなく米国憲法に謳われているデモクラシーがマッカーシズムを終わらせたというべきよね。

そういえば、GGIさんがいつも日記の最後に記している「グッドナイト・グッドラック」という言葉は、マッカーシズムと果敢に闘ったニュースキャスター、エドワード・R・マローを主人公にした映画(2005)の題名でしたね

GGIさん、コロナ禍、たいへんでしょうけれど大丈夫よ!でもね、アベ君が全国民にくれるという十万円、黙って自分のポッケなんかに入れたしてはいけないわよ、あなたはコロナで何か困っているわけでもないのだから、十万円は生活に困ってる人のために使わなければダメよ、わかった?

はい、わかりました、必ずそうします、マリリン、今日はいろいろ大切なことを教えてくれてありがとう、元気でね!

なもあみだぶ・なもあみだぶ・なもあみだぶ

(蛇足)マリリンに久しぶりに会ったと書きましたが、よく調べてみましたらちょうど二年前にも同じ場所で出会っておりました。そのときのことは2018年4月25日の日記に書いております。おひまな方はご覧になってください。また読書家マリリンについては、2017年10月2日の日記に書いています。よろしければついでにお読みになってください

グッドナイト・グッドラック!