史跡訪問の日々

幕末維新に関わった有名無名の人生を追って、全国各地の史跡を訪ね歩いています。

「西郷どん (上)(中)(下)」 林真理子著 角川書店

2017-12-29 00:02:14 | 書評
いうまでもなく、来年の大河ドラマの原作である。ようやく書店の店頭に並ぶことになった。
林真理子の作品を読むのは何時以来だろう。そういえば、四半世紀も前のことになるが、シンガポール駐在中に林真理子(と、渡辺淳一だったと記憶する)が来星し、その講演だったか、座談会だったかを聞きに行ったことがあった。そこで林真理子が歴史上の人物を題材として小説を書いたことを知り、早速買い求めた。今回、自分の本棚を探してその本を探し出した。下田歌子を描いた「ミカドの淑女」(新潮文庫)である。今となっては、この本を読んだ感想も記憶もあまり残っていないが、結果として林真理子には本格的歴史小説家という印象はない。
というわけで「西郷どん」である。上中下三巻に及ぶ作品であるが、読み始めるとアッという間である。特に私は読むのが速い方ではないが、それでも行き帰りの通退勤電車の中で、ほぼ十日で読破してしまった。これだけ薄い内容を一年もかけて放送するのか、とちょっと心配になってしまった。西郷伝としてはオーソドックスなものだと思うが。
本作品の特徴としては、母満佐、最初の妻、伊集院須賀、島妻愛加那、正妻糸といった西郷を取り巻く女性を丁寧に描いている点にある。幕末から明治の歴史を追うだけではほとんど女性は登場しないが、これだけ女性を描きこんでいるのは、やはり女流作家ならではだろう。
西郷が京都で活躍したころの愛人といわれる「豚姫」ことお虎が、リアルに描かれたのは、私の知る限りこの小説が初めてかもしれない。大河ドラマの原作に選ばれたのも、女性が登場する場面が多いというのが大きな理由ではなかろうか。
三冊のうち三冊の半ばまでは幕末から王政復古が描かれ、明治以降については西郷の息子菊次郎の口から語られる。極貧、自殺未遂、二度の島流しといった「地獄」から薩摩藩の軍事リーダーとなって倒幕の主役となり「栄華」を極める幕末期は、確かに超ドラマティックである。ここに多くのページが割かれるのも当然ではあるが、個人的には明治以降のミステリアスな西郷の方に惹かれている。大河ドラマでどのような時間配分となるか興味深いが、くれぐれも「ナレーションで解説して終わり」とならないように願うばかりである。
本書では西郷の眼を「黒曜石のように黒く光る眼」と印象的に紹介している。その西郷を鈴木亮平という若い俳優が演じるが、彼はどちらかというと細い目をしており、原作で描かれる西郷の風貌とはかけ離れている。このギャップをどのように埋めてくれるか、楽しみにしたい。

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