
わたしの住まいの近くに、「ぎぼまんじゅう」というお店がある。単なるまんじゅう屋かと思いきや、沖縄では有名なおまんじゅうの製造元という。作っているのは「のまんじゅう」と聞いて思い当たった。2年ほど前、職場にいただき物で届いたのが「のまんじゅう」。おっきくて、つぶあんがたっぷり入った白いまんじゅうに、赤でめいっぱい「の」の字が書かれていて驚いたっけ。
この「の」の字は、お祝いの縁起をかついで熨斗(のし)の「の」からきているそうだ。聞くところによると希望すれば「寿」や「祝」の文字も書いてくれるらしい。とにかくいただき物で一度しか食べたことのないのまんじゅうの“あちこーこー(できたて、あつあつ)”が食べたくて、お店に足を運んでみた。
広い通りから細い“すーじー(筋道)”を入ってすぐのところに建つお店は、おせじにも大きいとは言えない店構え。中に入るとすぐ手前にカウンターがあって、その奥ではたくさんのまんじゅうが蒸し上がっているのか、蒸気があがっている。そしてまんじゅうを包む月桃(ゲットウ)の葉の香りが漂ってくる。
わたしの前にお客さんがいた。カウンター上には包み紙の上に大きな月桃の葉が敷かれ、できたてのまだ湯気が上がっている大きなまんじゅうが5つ乗せられた。そして、店員さんは脇にあった朱色の液体につけられた筆をとると、躊躇なく驚きの早さで5つのまんじゅうにのの字をサッサと書いていく。そしてこれまた驚きの早さで月桃の葉と包み紙でまんじゅうを包み、袋に入れてあっという間にお客さんの手に渡していた。
すごい、職人技だ!と感動しつつ、「2つください」と言うと、すかさず「のの字は入れますか?」と聞かれる。もちろんハイと答え、わくわくしながら、まんじゅうが置かれてのの字が書かれ、月桃の葉に包まれて手渡されるまでの神業とも言える早い動きに再び感動した。
せっかくのできたてだから、すぐに食べる。2年前に食べたときは、冷めてしまっていて月桃の葉の香りだけが印象に残っていたのだけれど、やっぱりあちこーこーはウマイ!! つぶあんがぎっしり詰まっていて、かなりボリュームのある1個なのだけれど、ふっくらやわらかい皮の食感や月桃のイイ香りに食欲が増してペロリと食べてしまった。
のの字を入れないまんじゅうは法事用に使われるそうだけれど、時は受験シーズン。合格の知らせをもらった受験生に向けて、県内ではたくさんの「のまんじゅう」が月桃の香りと一緒に届けられるのかなぁ。(続く)