悪魔の囁き

少年時代の友達と楽しかった遊び。青春時代の苦い思い出。社会人になっての挫折。現代のどん底からはいあがる波乱万丈物語です。

若葉と青葉と紅葉と・・・

2017-12-12 10:25:33 | 日記
第一話[左馬](一)


「毎月同じ商品ばかりだね」
「基本的年間スケジュールアイテムです」
「うぅん~」
「あとはメーカーを変えて特売にします」
――なるほどぉ. ――
「最初は目玉商品や日替わりでチラシを出して買い遅れたお客に多少高めに特売で売れば、完売できると思いますよ」
「これを参考に特売を組んでいくか」
「そうすればうちの方も商品を欠品なく手配できます」
「売価は競合店のチラシの下を潜るように作ればいいのか」
「イワハンのチラシを広告会社の田辺さんに聞いてみたらどうですか」
「敵の情報など教えてくれないよ」
「イワハンの付き合いの方が長いですものね」
「それに担当者も違うしね」
「じゃしょうがないですいね」
「まぁ、うちはうちのやり方で正々堂々とやっていくよ」
「それがいいですね」
「それで数はどうなの」
「うちも得意先に同じ表を出していますので、相乗りで行くと思います」
「そうするとオーバーストックになるような注文を出さなくてもいいのか」
「そうですね」
「それで赤字で処分した商品はどうなるの」
「売れた分は値引きして、残りは引き上げます」
「それならうちは傷が浅く済むか」
「はい――」
「出来るだけバックヤードには置いておきたくないからね」
「うちも季節の物の残りはメーカーに返品で来ますから」
「それならお互い損はないわけだね」
「ですね」
「問屋も在庫を抱えておく時代じゃないんだね」
「ハイと言っても、取り敢えずメーカーの倉庫に預けておくようなものですけどね」
「それで来年も使うわけですね」
「そんなとこですね」
「じゃぁ~ これで行きますよ」
「よろしくお願いします」
「しかし、他の問屋も商談だけでも来てくれればねぇ」
と最後にもう一度不満をこぼした。
私は宮野課長のチェーン転回の話を信用していた。
本音を言うとドライブ3割、仕事が2割、残りの5割が権堂の地下街を飲み歩く事だった。
とにもかくにも約束だけは守っていたので信頼されていた。
東京から車で6時間かけて、誠実に毎週金曜日に商談に顔を出した。
「待っていました――」
と、ばかり新規搬入決まると、他の問屋は自社のデットストックやオーバーストックの売れ残りやなど流行遅れの商品をブッ込み売り逃げした。

悪徳オーナーは空いている土地に600坪の掘っ建て小屋同然の店を造った。
DMC・HC・日商などのグループにも所属せず、口コミで問屋を呼び集めた。
大々的にオープンセールをぶち上げた。
三日間の売上金全額持って“トンズラ”してしまう事も有った。
なので・・・ 
どちらが悪か―― 
は、判断出来ない。
***◆◆◆***

「村さん。まいったよ」と文進社の池田課長が言った。
「どうしたの」
「新規オープンで搬入したんだけど、オーナーに逃げられたんだよ」
「どこの」
「HICグループなんだよ」
「聞いたことないなぁ~」
「やはり什器やなんだけど、新しく問屋を加入させてグループを作ったんだよ」
「うちには来なかったねぁ~」
「業界では名前が通っているし、運も良かったんだな」
「うん。うん。うん」
「それで説明会に60代の吉田社長と田渕専務・小池乗務が来ていたから、みんな信用してしまったんだよ」
「名刺は交換したの」
「そう。3人とも立派な肩書きでなぁ~ 東大・早稲田・慶応卒で、おまけの経済学マーケッティングアドバイザーと書いてあったよ」
「それじゃぁ~ 引っかかるなぁ」
「ホント。すっかり信用したよ」
「どこでやったの」
「港区高輪プリンスホテルだよ」
「豪華なところでやったね」
「金がありそうだものなぁ」
「それで場所は何処なの」
「北海道だよ」
「遠いなぁ」
「南にはあるけど北には殆どないからね」
「なに、店舗展開しているところなの」
「いや、初めてだよ」
――なるほどぉなぁ ――
「それで店の規模は」
「敷地が1200坪で建坪が600だよ」
「大きいねぇ~」
「ここまでデカイと問屋もぶっ込みが出来るから、目がくらんだんだよ」
「北海道で土地が余っているから、いくらでも大きいのを建てることができるんだろうなぁ」
「そうなんだよ」
「そうなると商品がかなり入ったね」
「定番と特売を合わせて500万円だよ」
「紙問屋としては入ったね」
「レイアウトも普段の倍はあったよ」
「そんなに入れるアイテムはないでしよぅ」
「そう。だから出筋は棚にロットで並べたよ」
「キツいなぁ~」
「それに関東犬猫舎は600万円引っかかったらしいよ」
「おそらく他の問屋も引っかかったろぅなぁ」
「雑貨部門や、インテリア部門なども、ハード商品は少なくしてソフトを多めに納品したから、在庫がほとんど空だったらしいよ」
「それでカー用品はどこが納品したの」
「どこかは聞かなかったけど、地元の問屋らしいよ」
「うちが丸抱えでオープンさせると1200万円はブッ込むから、おそらく1000万は下らないだろうな」
「それにディスカッションショップスタイルで、定番を安く設定したから売れたんだよ」
「するとハード部門が多少残っているだけか」
「うぅん――」
「じや、営業所が“パク”られた形になるんだぁ」
「だと、思うよ」
「それで捕まったの」
「それがオープンの最終日に売上を掻き集めて、次の日には海外に高飛びしたらしいよ」
「そうかよう」
「なんせ金を払わないから、元手無しの坊主丸もうけだよ」
「これからもあるだろうなぁ~」
「量販店に入れない無名の問屋も多いからねぇ」
******

宮野課長は日商の本部に2号店のオープンの相談に行った。
「社長。中野に2号店をオープの予定です」
「そうなの。それで店の規模は」
「若槻店と同じ150坪です」
――なるほどぉ. ――
「それで場所は」
「国道18号線から403号線入って1キロほど先の国道道沿いです」
「それだと湯田中温泉の手前ですね」
「そうです」
「すると湯田中温泉の客がターゲットになりますか」
「そうですね。それに競合店がないので売れると思いますよ」
「あと駐車場は」
「若槻店の2倍になります」
「いいところでだねぇ~」
「はい<」
「今回も日商グループでオープンする訳ですね」
「そのつもりですけど――」
「いつ説明会をやりましょうか」
「それが、ですねぇ~」
「うぅん・・・」
「社長のグループの問屋は、一社意外どこも商談に来ませんよ」
「えぇ~」
「なので今度はDMCグループでオープンしようかとも思ってもいるんですよ」
「しょうがない問屋だな。よく言っておきますよ」
「よろしくお願いします」
日商の本部でオープン説明会になった。

「中。ジョイマートの2号店が決まったよ」
「やはり、だねぇ~」
「良かったねぇ」と社長が喜んだ。
「やはり信用して良かったな」
「俺も行った甲斐があったよ」
「チューさん。ご苦労さんだったねぇ」
「課長の話だと売れるらしいですよ」
「場所は何処だい」
「中野って 言ったなぁ」
「地図で見ると湯田中温泉に近いところだな」
「そう」
「それでオープンはいつだぁ」
「多分12月らしいよ」
「ぜいぶん押し詰まってから、オープンするなぁ」
「3店舗目の兼ね合いがあるんじゃないかな」
「すると3店舗目も決まっているのか」
「らしいですね」
「すごいじゃねぇ~」
「それで中野店の搬入日は」
「11月になると思うよ」
「そうかぁ~」
「市内から遠けどねぇ」
「なら温泉旅行気分で行けるな」
・・・ニャハハハハハハ!!!!・・・
「専務。説明会は行ってくれるんでしょ」
「行くよ。お前はどうする」
「俺はレイアウトを作っておくよ」
「カー用品のゴンドラ本数は解っているのか」
「多分30~35本だよ」
「若槻店と同じか」
「カー用品は若槻店より売れるみたいよ」
「そうすると雪国だから、冬はウインター用品がメインになるな」
「其の辺を充実させて棚割を書くよ」
「東洋商事もまた入るんだろう」
「そうだと思う」
「なら若槻店と同じアイテムにするかい」
「そのつもりだよ」
「向こうは冬物が強いだろう」
「いや、タイヤチェーンぐらいだよ」
「納品は7対3にするのか」
「今回は9対1だよ」
「悪党」
「指導権が俺にあるからね」
「よく やったなぁ――」
「ありがとう・・・」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \

10月頭に日商本部で、午後2時から説明会が始まった。
「毎度」と文進社の池田課長が後ろから挨拶に来た。
「おっ マイド マイド」と大村専務が全面の席に座っていた。
「いゃぁ~ 2号店ができるとは思わなかったよ」
「うちは中があると言っていたから、驚かなかったよ」
「それで中ちゃんは商談に行っていたの」
「そうだよ。約束通り毎週行きましたよ」
「そうなのかぁ~」
「今回は正解だったよ」
「うちはないと思っていいたからオープンヘルプ依頼、草原には商談には行かせなかったよ」
「それは失敗したね」
「そうだよなぁ~」

「こんちは」と関東犬猫社の吉本専務が入って来た。
「まいど マイド」
「本当に2号店オープンするんだねぇ~」
「そうだよ」
「村さんは知っていた」
「うちは分っていたよ」
「俺のところは知らなかったよ」
「うちも同じだよ」と池田課長が言った。
「おそらく他の部門の問屋も知らなかったと思うよ」
「うぅん~」
「笠松常務の話だと、宮野課長が商談に来ないと怒っていたみたいよ」
「後で挨拶しておくか」
「それがいいよ」
「毎度」と東洋商事の坂田課長が来た。
「マイド~」
「ムラさん聞いた」
――!?――
「カー用品のゴンドラ本数よ」
「まだ、決まった数は聞いていないよ」
「そうなの」
「今日教えてくれると思うよ」
「うちは商談に行かなかったから、減らされるような気がしてねぇ」
「それは大丈夫ですよ」
「じゃぁ~ 若槻店と同じかね」
「じやないかな」
「良かった――」

「社長。揃ったよぅですね」と本部の笠松常務が言った。
「そうか」
柱時計を見た。
「よし。始めるか」
20代後半の飯田佳代子事務員さんが資料を配った。
「宮野課長。説明をお願いします」
「分かりました」と立ち上がった。
「ご苦労様です」
“よろしくお願いします<――”
「早速出すが2号店は(中野店)12月10日に長野県中野市にオープンします」
シ~ン
「見積もりは11月の15日までに提出してください」
シ~ン
・・・全問屋うなずく・・・
「店は敷坪600。建坪が150になります」
・・・うなずく・・・
「搬入日は12月5日~8日までに完了させてください」
・・・うなずく・・・
「泊りになる問屋さんは申し出てください。こちらで手配しておきます」
・・・うなずく・・・
「後は若槻店と同じです」
・・・うなずく・・・
「ご質問はございますか」
「はい<」と文進社の池田課長が手を挙げた。
「どうぞ」
「うちの搬入は2日はかかると思うので、泊まりの手配はいつ頼めば宜しいでしょうか」
「弊社本部の勝田知子に連絡してください」
「それでホテルは何処になりそうですか」
「湯田中温泉旅館になります」
・・・ニャハハハハハハ!!!!・・・
「疲労回復によく聞きますので、最適だと思いますよ」
「こっちの方はどうですか」と池田課長がてを口元に持っていった。
「酒も美味し、ねぇちゃんも綺麗ですよ」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \
「いいですか」と関東犬猫社の吉本専務が手を挙げた。
「中野は長野市内から何キロぐらいですか」
「25キロ弱か と 思います」
「そうですか。それで時期的に雪は大丈夫ですか」
「12月なら大雪にはならないと思います」
「すると降ることは降るんですね」
「そうです」
「現地の人は11月下中にはスパイクタイヤを履いています」
――なるほど――
「宜しいでしょうか」
「ありがとうございます<・・・」
「はい」と大村専務が手を挙げた。
「大村専務」
「見積もりは送って宜しいでしょうか」と代表して聞いた。
「送りでもいいですけど、出来れば商談に来た時の持ってきてくれるとありがたいですね」とイヤミ気味に答えた。
「分かりました」
「他には・・・」と見回した。
・・・うなずく・・・
「よろしいですね」
・・・はい<・・・
「それと、商談の日には必ず来てくださいね」
――了解しました<――
最後に平沢社長が挨拶に立った。
「ふざけんなよ。お前ら」といきなり怒鳴った。
「1部の問屋以外、何処の問屋も商談に行かなかったという事じゃないか」
“まずい”
「今度行かなかったら、日商グループから抹消するからな」
“ハイ<――”
「いいなぁ・・・」
“分かりました<――”

「中。中野のオープンは12月の5日~8日までに決まったよ」
「そう。それでオープンは」
「10日からだよ」
「ふぅん~」
「これ見ておいて」と資料をもらった。
「うん」
「まだ平面図やゴンドラ本数は分からないのか」
「そう」
「おそらく平沢社長のところで作っていると思うよ」
「遅くないかなぁ~」
「それほど若槻と変わらないから、手直しでだけで済むんじゃないかな」
「そうすると、今回はカー用品は奥に行くのかなぁ~」
「どうだろうねぇ~」
「最近のレイアウトは、売れる部門をレジ近くに持ってくるからな」
「それで奥の壁面はインテリアと家具になるのか」
「大物だから入口からも見えるし、壁面の効率のいいんだよ」
「そんなら若槻と同じだと思いっていた方がいいね」
「そうだな」
「取り敢えずゴンドラ本数が分かったら、アイテムを変えて商品構成するよ」
「季節物は雪国用にして、定番は同じでいいと思うよ」
「決まったらいつでもメーカーに発注できすようにしておくよ」
「そうしておいて」
――OK――
「それで東洋商事の商品はどうする」
「若槻店と同じだよ」
「ゴンドラが増えてもかぁ」
「そうだよ」
「悪魔――」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \


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