透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

年末年始に読んだ本

2018-01-04 | A 読書日記



■ 『蒼天見ゆ』葉室麟/角川文庫 と『敵討』吉村昭/新潮文庫を読んだ。

仇討を描いた作品を新年早々取り上げて好いものかどうか、でも両作品とも読み終えたから載せておく。共に実際に起きた最後の仇討を基にした小説。

幕末の地方藩内の政争により惨殺された父母の仇を明治になって息子が討つ、仇討禁止令発布後に起きた最後の仇討、「事件」。江戸時代に美風とされていた仇討は明治になって殺人として処せられることに。時代の大きな転換期に起きた「悲劇」。

吉村昭も「最後の仇討」というストレートなタイトルの短編にしている。両作品のラストは次の通り。

**故郷の秋月の黒田家歴代の菩提寺でもある古心寺の墓地に、両親の墓に寄り添うようにして六郎の墓は建っている。**(『蒼天見ゆ』)

**寝棺は、秋月まで運ばれ、古心寺の両親の墓のかたわらに埋葬された。**(『最後の仇討』)

葉室麟の作品はタイトルからして文学的、描写も然り。吉村昭は当時の新聞記事に書かれた名称をそのままタイトルにしている。史実の細部にまでこだわる吉村昭の作品は記録文学のよう、この作品然り。