透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー



「どくとるマンボウ青春記」

2008年10月18日 | A 本が好き


路上観察 街中のお城 青翰堂



1)北杜夫の代表作は 
2)最も好きな北杜夫の作品は

もしこんなアンケートがあれば私は次のように回答します。

1)「どくとるマンボウ青春記」
2)「木精(こだま)」

 松本市内の古書店「青翰堂」で斎藤茂吉と北杜夫の著書を特別展示していると新聞記事で知りました。早速、街中のお城として観光客にも知られている「青翰堂」へ。古い木製の看板の下のショーウインドーに全集や単行本などが展示されていました(写真)。

記事には、この古書店が『どくとるマンボウ青春記』に出てくるとあります。探してみると・・・、**いま思いだしても癪にさわるのは、松本の大きな古本屋が、貴重な本、たとえば『善の研究』などには、金のほかに米まで要求したことだ。私は牧野富太郎博士の『日本植物図鑑』がどうしても欲しかった。しかし、この厚い図鑑は金のほかに米三升が必要であった。(中略)三升の米を本屋に渡すのがどんなにか悔しかったことであろう。**

ここに出てくる松本の大きな古本屋というのが青翰堂だったんですね。「青春記」を雑誌に連載した後、北杜夫は出版社の人と青翰堂を訪れて事情を聞いたそうで、単行本にする際、そのことを「附記」に書いたそうです。

手元の文庫本で確認すると確かに附記があります。**附記。私は最近松本へ行き、かつての古本屋の御主人と話をした。決してその本屋がわるかったわけではない。むしろ良心的に値段をつけておくと、悪質な本屋に買いしめられ、他の古本の入手も困難で、一週間でまともな本はなくなり店がやれなくなると忠告された由だ。従って良書を手離すには他の古本や米との交換がぜひとも必要であった。いずれにせよ、そういう時代であったのである。**

具体的に古書店の名前を書いているわけでもないのに、実に誠実な対応ですね。北杜夫の人柄でしょう、きっと。

「青春記」によると終戦後に岩波文庫が粗悪な紙で発行されたそうですが、そのころは内容も知らずに岩波文庫を手に入れようという客で行列ができたそうです。そういう時代だったんですね。

『どくとるマンボウ青春記』を読んだのは大学生のとき、もう○十年も昔のことです。再読してみようと書店で探してみました。松本市内のいつも行く書店にも、文庫をよく揃えている老舗の書店にもありませんでした。なんということでしょう。松本を舞台にしたこの名著が置いてないなんて。手元にあるのは佐々木侃司さんがカバーデザインした中公文庫、新潮文庫のデザインを知りたかったのに、残念です。


 

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繰り返しの美学 小谷村役場

2008年10月18日 | B 繰り返しの美学


 繰り返していればなんでもかんでも美しいのか、と問われそうな気もしますが、気楽に繰り返しを楽しもうというスタンスで取り上げていることをご理解下さい。で、今回は小谷村役場のファサードです。

全国でも有数の豪雪地の村の庁舎、屋根の雪を受ける大型のコンクリートの軒樋を兼ねる庇をペアの袖壁が支えています。

庁舎というとなんだか近寄り難い高圧的な印象のデザインも無いわけではありませんが、このファサードから重すぎず、軽すぎず、親しみやすいという印象を受けます。この表情の創出に袖壁のリズミカルな繰り返しが効果的に効いていると思います。
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