家族旅行の意義

一昨日、１週間振りに帰ってくると、日本は少々肌寒く、春真っ盛りを疑うようだったが、桜は満開で空は晴れわたり実に気持ちのいい陽気が私を出迎えてくれた。

行く時はつぼみだった桜がたった１週間で満開になった変化に驚きながらも、改めて桜の美しさに感動を覚えた。

最近海外旅行して思うのは、日本の良さを再認識するために海外旅行へ行ってる気がしてならない。

どんなに素晴しい旅行であっても、所詮は非日常の世界であって、普段の生活とはかけ離れすぎている。

旅行という表面的で通りすがり的なものとそこで生活する事とは全然違っている。

生まれて初めてか、久しぶりに体験するから素晴しいのであって、それが日常になってしまえば何処にいても同じである。

そして、年齢を重ねて体の芯まで染み付いた日本での生活習慣はもはや棄てさることは出来ない。

食事や言葉を含めた生活環境も慣れている日本が一番いいに決まっている。

帰国の第一歩を飛行機から踏み出した時は、帰ってきた気がするものの、まだどこか気が抜けないためかそれほど感じないが、税関構内を抜けて自動ドアから外へ出た瞬間、「あー、日本に帰ってきた」を一番実感する。

本当にホッとする、そして日本が一番いいと感じる場面だ。

昔はさほど感じなかったので、それだけ自分が歳を取ったということに他ならない。

生涯、旅行を自分の楽しみとして続けはするが、定年後の海外移住はただの夢にしておいた方が良さそうだ。

さて、今回は親との旅行を嫌がっていた１５歳の息子を旅行に連れ出すのにNBAのバスケット観戦というエサを付けての家族旅行だった。

しかし、娘やカミさんはそんなにバスケに興味は無く、ハワイへ行きたがっていた。

もう３年も行っていないハワイに相当恋焦がれていたようだった。

私自身もハワイが大好きで行きたかったので、そのNBAというエサを旅程の一番後ろへ持っていき前半でハワイという旅程にしてみた。

NBAの試合はハワイでは見ることは出来ないのでハワイからロサンゼルスまで足を延ばしての旅行になり少々くたびれた。

家族旅行なので全員の意思を尊重するとハワイ優先となり、息子の為にNBAの試合を沢山見るという訳にはいかなかったのだ。

１試合が限度だったが、ロゴ入りオフィシャルグッズを買ってあげるなり、これでも随分気を使ったつもりだ。

全員のしたいことを少しづつ取り入れての妥協の産物が結局家族旅行ということになるのだろう。

カミさんはショッピングが基本で後はのんびりしたいリゾート派で、娘はプールさえあれば嬉しいただの”ガキンチョ”だし、私は何かアクティビティをしないと気がすまない行動派であり、美味しいものに目がない食いしん坊でもある。

息子はバスケット以外に興味は無く、旅程の最後にNBAがあることで、とにかく一緒について来たという感じだった。

しかし、そうやって息子を連れて行動を供にする家族旅行はやっぱり行って良かったと思う。

普段の生活では息子との会話が殆ど無かったのに、旅行中良く話したし、冗談も出て家族でよく笑い合っていた。

何を考えているか分らなかった息子の心の一部を垣間見た気がする。

少なくとも自分なりにバスケのプロ選手にはなれそうにない事は分っており、その際の職業選択もちゃんと考えているようだ。

レンタカーの中、ホテルの中、レストランなど一緒に行動することで自然に会話が生まれ、その会話の端々で彼の考えが分ったのだ。

普段の生活で改まって向き合って話しても到底こんな会話は生まれなかっただろう。

本当に家族が一つになれたような気がする。

NBAの観戦では得意げに選手やチームの特徴など、そしてバスケのテクニックや戦術についても目をキラキラと輝かせて語ってくれていた。

これは何年か前までの家庭での風景と重なって、この楽しさが帰国後もずっと続けばと願ったものだ。

しかし、所詮それは叶うはずもなく非日常だからこそ実現できていたに過ぎなかったのだ。

帰国して非日常が終わり、また元の生活が普段通り始まった。

また、息子との会話は絶えてしまったが、これから暫らくの間だけでも、分かり合えていられるだろう。

非日常の家族旅行のお蔭だと思っている。