typeKIDS

書物と活字の懇話会

貘1973-B:和字書体制作奮闘記

2015年03月05日 | typeKIDS_Workshop
「typeKIDS」のメンバーは、書体制作に関してはまったくの初心者です。ひとつの体験として、昔ながらの方法、つまり紙に墨で描くという活字書体制作に取り組むということになりました。作品として制作するのではなく、もちろん商品化するということではありません。体験を通して活字書体を理解しようというものです。
 活字書体をつくるといっても、どこから手をつけていいかわからないということで、「貘1973」という、今田が学生時代の1973年にスケッチしていた書体を体験の素材として提供することにしました。当時は金属活字の原字として考えていたのですが、日の目をみないまま埋もれていたものです。
 和字書体はひとりで担当しないと全体的なイメージが統一できません。それを承知の上で、「貘1973」は、ひらがなを4名で分担することにしました。あえてグループ制作に挑戦してみることになったのです。
 原字用紙(兼下書き用紙)のデータは、メンバーのひとりがAdobe Illustratorで作成することになりました。原字用紙(兼下書き用紙)は2inchボディ・サイズで、1/18inch(約1.41mm)方眼で薄いブルーのガイドラインを入れることにし、A4サイズに12文字入るようにレイアウトされています。
 すべてアナログで制作するということになったので、原字制作の道具を揃える必要が出てきました。とりあえず、昔使っていた道具について説明し、専門的にやるわけではないので、所持していないものは何かで代用できないかを検討しました。
 制作の工程として、「プリントして下書き用紙とし、鉛筆で下書きをする」「もう一枚を原字用紙として、下書きをアウトラインでトレースして墨入れをする」「できた原字を仕上げて、チェックを繰り返しながらメンバーみんなで完成させていく」ということになります。
 以下、2013年10月から2015年3月までの記録です。

第1プロセス 下書き





40年前に今田が描いた活字書体「貘1973」の下書きを、活字の原図サイズにあわせて2inch(5.08cm)角に拡大するということから始めることにしました。トレースすればいいだけなのですが、やってみるとなかなか難しいことでした。直線がきれいな直線にならず、円弧がきれいな円弧にならない。いざ手書きとなると、なかなか思い通りにはいかなくて歯がゆいようでした。
 最初から思い通りになるわけではなく、修整をくりかえしながら、カタチを整えていくわけです。経験者はそれがわかっているからもう少し大胆に描くことができるのですが、ほとんどのメンバーが活字書体制作の経験がなかったので、少し苦労しました。
 また、自分の好きなスタイルを描くというのであればもっと簡単にできるのかもしれません。なにかに合わせるというのは、見本があるからやりやすそうに見えますが、実は意外と難しいことだと思われます。なにしろ書体設計の経験がないメンバーで、しかも同じ書体を分担しているのだから、どうしても個人差が出てしまうのは仕方ないところでしょう。



第2プロセス メーキャップ



下書きが終わり、メーキャップへ。下書き用紙の上に原字用紙を重ねて、アウトラインをトレースします。一度墨入れすると大幅な修整ができなくなるので、この工程で太さなどを調節しながら、しっかりとアウトラインをかためます。

第3プロセス 墨入れ



はやく進んでいる人から墨入れに入ります。溝引で曲線を引く練習をしたので、いよいよ実践ということになりました。フリーハンドでも可能ですが、溝引を使いこなせるようになると便利な技術なので、できるだけ挑戦するようにしています。
 初めての体験で、烏口や溝引きになかなか慣れず、思い通りにはできてはいません。練習をおろそかにしてしまったかもしれません。やはり用具の使い方をみっちりやるべきだったかなと反省しています。今回は、原字制作の難しさを認識したことが成果です。

第4プロセス 仕上げ



墨入れが終わると仕上げ作業に入ります。はじめての墨入れということもあって、メーキャップのとおりとはいかず、かなりガタガタです。ポスターカラーのホワイトと墨、2本の筆を使っての仕上げ作業に苦労しています。溝引きが慣れないので、ついついフリーハンドになることが多いようです。



第5プロセス センター入れ
文字の寄り引きにかかわるセンター入れの作業は、重要な工程です。しかしながら、専用のゲージの作成が間に合わなかったこともあって、今回は止むを得ず省略しました。


第6プロセス アウトライン・データ化(母型パターン製作に相当)



手作業にこだわっている「貘1973」の制作ですが、この工程だけはパソコンの力を使わざるを得ません。とはいえ、どこかに依頼するのではなく、原字を制作した文字を担当者が自ら3Dデータ化するので、手作りに近い感覚ではあります。
 制作した原字をスキャンして、Adobe Illustratorでトレースしてアウトラインデータにします。金属活字に例えれば、亜鉛凹版を作成して母型パターンを製造する工程に相当するのだと思いながら作業をすすめることにします。

第7プロセス 3次元CADデータ化(活字母型の彫刻に相当)



Adobe Illustratorで作成したアウトラインデータをSVG出力し、123D Designにインポートして3次元CADデータに加工し、Export STL でSTL出力します。こじつければ、ベントン型活字母型彫刻機により、活字パターンからの活字母型の彫刻に相当する作業にあたります。

第8プロセス 樹脂活字製作(活字の鋳造に相当)



自分の手で設計、データ化した3次元CADデータを使っての活字製作(活字鋳造ではなく)です。用意した3Dデータ(STLデータ)を東京メイカーに送り、出力しておいてもらいました。素材はABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを重合させてつくられる樹脂)、色はホワイトを選択。

第9プロセス 活字組版



「いろはうた」を組んでみることにしました。印刷機で一度には刷れないので、2回にわけることになりました。

第10プロセス 印刷





東京アナログラボ所有のAdana21Jにセットして印刷してみましたが、表面が平滑でないためきれいに印刷できませんでした。活字は、微妙な高さの違い、傾きがあると、ちゃんと印刷できないのです。活字のボディの大切さ、活字組版の難しさをあらためて思い知ったのでした。今回はそれが成果でした。
 今後は、制作が遅れた字種があって間に合わなかったカタカナ48字を含めて、樹脂活字にかわる別の方法を考えたいと思います。


どうしてもはっきりと印刷したかったので、1行ずつ版をわけて印刷することにしました。何度も調整して、すべての行までなんとか印刷し終えました。







[追記]





ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
« 第2回 明朝体の誕生(大明南... | トップ | typeKIDS Exhibition 2015 内... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

typeKIDS_Workshop」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事