typeKIDS

書物と活字の懇話会

貘1973−B:漢字書体制作奮闘記

2015年03月17日 | typeKIDS_Workshop
1973年に今田が描いたレタリングを、40年の時を経て「貘1973」の初号活字として製作してみようというプロジェクト。和字書体とともに漢字書体の制作もすすめられています。活字の原図サイズにあわせて2inch(5.08cm)角に、紙に墨で描くという方法で活字の原図を制作していくことになりました。

Step1 試作4字

ほとんどのメンバーが活字書体制作の経験がありません。しかもすべて手作業でやろうとしているのですが、なかなかイメージがつかめないようです。そこで、今田がまず「貘ボールド」で「謹賀新年」の4文字を制作し、3Dプリンターによる樹脂活字にしてみようということになりました。サンプル4文字だけでも形になると、制作にもますます力が入ると思ったからです。



 使用する出力機は、産業用ではなく、低価格なパーソナル3Dプリンター。多くの字種を作りたいので高額になると困るのです。できるだけリーズナブルにしたいところでした。素材は、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを 重合させてつくられる樹脂)、色は鉛活字に近いシルバーを選びました。
 途中で、裏文字でなければいけないのに表文字になっているというトラブルはありましたが、樹脂活字4文字が完成しました。熱がさめるのを待つ時間がもどかしいものです。やっと手に取ってみると、残念なことに……。画質はガタガタ、表面は凹凸があるのです。ノズルのピッチと線幅の干渉で、面が部分的に抜けてしまっています。今後も試行錯誤を繰り返すことになるでしょうが、なんとかオリジナルの樹脂活字を製作したいと思ったのでした。



 まず、サンプル4文字(季節外れの「謹賀新年」)の樹脂活字だけで組版し、東京アナログラボ所有の真新しい Adana21Jにセットして印刷してみました。
 予想通り表面が平滑でないため、きれいに印刷できません。表面をサンド・ペーパーで削り、なめらかにしました。つぎにテープで微妙に高さを調整していくことになりました。何度か試行錯誤を繰り返したがうまくいきません。印刷のときの微妙な力加減で、なんとか濃度が均一にできるようになりました。








Step2 書体見本12字

このサンプル4文字を参考に、書体見本12字(毛永辺紙囲室調東激機闘驚)を制作することにしました。「typeKIDS」のメンバーは書体制作に関してはまったくの初心者ですが、ひとりだけ活字の原図を描く経験のあるベテランがいるので、書体見本12字の制作を委ねました。
 サンプルをもとに、あらためて原字用紙に画いてもらうことになりました。簡単な仕様(字面サイズの基準、ウエイトの基準)を決めておきました。工程は和字書体と同様で、下書き、メーキャップ、墨入れ、仕上げ、センター入れ、となります。







 これも和字書体と同じように、制作した原字をスキャンして、Adobe IllustratorでトレースしてアウトラインデータにしてSVG出力し、123D Designにインポートして3次元CADデータに加工し、Export STL でSTL出力しました。これを東京メイカーに送り、出力しておいてもらいました。



 結果は残念なものでした。画数の多い4文字(激機闘驚)には潰れているところがあったので、12文字全数の印刷テストはあきらめざるを得ませんでした。
 漢字かな交じり文のコピーも印刷する予定でした。

激闘に驚き
いつしか永機は
東の囲まれた室て
毛辺紙を調へる

※永機(1823-1904)は幕末・明治の俳人、毛辺紙は竹を材料とした紙の種類のこと。

書体見本の12字をすべて使い切り、ひらがなを重複させないでできるだけ多く使うという条件でコピーを作っていましたが、これも断念しました。


画数の多い文字をのぞいた残りの8文字だけを使ったコピーに変えて、なんとかテスト組みまではできました。



Step3 千字文のうち冒頭108字

当初は自分の名前が組めるようにしたいと考えていました。名前も含めて12字を選んで下書きをしてみることになったのですが「田」とか「子」とかは重複してしまいます。ほかに、自分の好きな熟語や漢詩が組めるように重複することのないように調整しながら、これが出発点としてすこしずつ増殖させていこうと思っていましたが、いっそのこと、千字文の冒頭から12文字ずつ画いていこうということになりました。本来なら書体見本にあわせてということになるのですが、スタートの時点ではまだできていませんでした。そこで「貘L」漢字書体の下書きを参考にしてもらってすすめることにしました。



 下書きが終わったと思ったところで、通信教育のようにトレーシング・ペーパーを重ねて赤鉛筆でチェックを入れています。月1度、2時間程度の作業ではなかなか進みませんが、それを参考にしながら下書き上での修整をしていきます。普段よく見ているはずの漢字書体ですが、実際に画いてみると思うようにはできないようです。
 限られた時間なかでは簡単にできるというものではないので、自宅でも作業するようにして順調に進んでいます。







 下書きが終わると、メーキャップ、墨入れになります。その前に、烏口で直線を、溝引で曲線を引く練習をしました。ほとんどのメンバーが初体験なので、まだ慣れていませんが、使いこなせるようになると便利な技術です。溝引定規は手作り。ガラス棒と版下筆(名村製の白桂小を使用)を使っています。



 パーソナル3Dプリンターの限界を感じたので、今後は新たな活字製作の方法を模索して行くことになるかもしれません。


[追記]




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