四季おりおり

自然散策そして音楽のことなど・・・ 
2010年秋より里山・谷戸歩きで見た風景や蝶・花の紹介が増えてきました。

アメリカピンクノメイガ Pyrausta inornatalis の来訪

2020-02-04 17:22:00 | 
2019年10月20日、庭のブッドレア(白花)に見たことのない珍客の蛾が訪花しました。


アメリカピンクノメイガ Pyrausta inornatalis 
2019年10月20日 自宅のブッドレアに訪花

蛾に詳しい友人に尋ねたところ、マエベニノメイガに近いけれど、マエベニは5月から7月に出現するのでマエベニではなさそうでした。また、マエベニは前翅の後縁が黄褐色の種類ですが、写真の個体は前翅一面が濃い紅色で、外観も異なります。

それ以来謎の蛾でしたが、今回発行された「誘蛾燈(宮野,2020)」に日本で初お目見えの蛾「アメリカピンクノメイガ」と命名して報告されました。そんな珍しい種類が庭に来てくれていたとは感激です。

アメリカピンクノメイガが掲載された誘蛾燈の情報をいただいた二人の友人に感謝いたします。


追記(2月14日)
<マエベニノメイガとアメリカピンクノメイガの比較>

外観から両種は識別できるのではないか。マエベニノメイガは秋には出現しない。

マエベニノメイガ Paliga minnehaha (Pryer, 1877)
ツトガ科ノメイガ亜科Paliga
1.出現期 4-7月
2.主な産地 日本、朝鮮半島南部、中国
3.食草  オオムラサキシキブ
4.外観  前翅は紅色で波打つ筋がある。前翅の基部から後縁部にかけて黄褐色。
5.訪花性 フジに訪花、本種の発生時期とフジの開花時期が合致しているとの指摘がある(池ノ上・金井,2010)。サワフタギへの訪花の記録がある。

アメリカピンクノメイガ Southern Pink Moth
Pyrausta inornatalis (Fernald, 1885)
ツトガ科ノメイガ亜科Pyrausta

iNaturalistのPyrausta inornatalisの項(資料1)には、早くも和名「アメリカピンクノメイガ」が付されている。

1.出現期 3-11月
2.主な産地 アメリカ合衆国、メキシコ、日本(資料2)。2017年頃から日本での記録あり(資料3)。宮野(2020)では、サルビアの移入に伴って日本に侵入したものと推察している。しかし、どのようにサルビアの移入により入り込んだのか詳細不明。
3.食草  ブルー・サルビア(Salvia farinacea)、ベニバナ・サルビア(Salvia coccinea)などのサルビア類(資料2
4.外観  前翅は一様に濃紅色で波打つ筋が見られない
5.訪花性  ブルー・サルビア、Salvia cuatrecasana、サルビア・ガラニチカ(Salvia guaranitica、メドーセージの名で流通)などのサルビア類への訪花記録が多い。その他では、ブッドレア(紫・白花)、トウワタ( milkweed)など(資料2)。

日本において、マエベビノメイガへの訪花としている投稿がいくつか見られたが、外観から見て以下の3例はアメリカピンクノメイガと思われる。
コセンダングサに訪花(2019年10月24日)(資料4
メドウセージ(サルビア・ガラニチカ)に訪花(2019年11月3日)(資料5
ブルー・サルビアに訪花(2019年10月頃)(資料6

日本でもアメリカピンクノメイガのブルー・サルビア(Salvia farinacea)やメドウセージ(Salvia guaranitica)への訪花記録が散見されることから、これらの花壇に注目すれば出会えるかもしれない。ブルー・サルビアの花期は5~10月と長い。相模原公園(2012,13年)では、6月上旬から10月中旬までの蝶の訪花を見ている。管理人の庭にはブルーサルビアのプランターが置かれていたので、これに誘引されてやってきた可能性もあるだろう。


付録1 
List マエベニノメイガPhotos and Videos(資料7

アメリカピンクノメイガの画像がマエベニノメイガとしていくつか掲載されている。


付録2 (2020.2.19追記)
アメリカピンクノメイガの日本における記録
愛知県豊川市 2017.8.9, 2019.9.29 Biglobe ウェブリブログ(資料3

岐阜県各務原市  2019.7.2, 2019.7.24, 2019.8.4(宮野,2020)

滋賀県守山市播磨田町 2019.8.25, 2019.10.31 (前田・吉安,2020)

愛知県・群馬県高崎市 Takeo Kaneko もすくらぶ(Facebook もすくらぶPublic Group 2020年2月3日記事)

神奈川県相模原市南区(管理人の自宅) 2019.10.20

神奈川県横浜市 2019.11.3 Hidewaku095 Instagram(資料8-1

東京都練馬区 2020.8.8 黒柳昌樹 もすくらぶ(資料8-2)

京都市 2020.7.24 河合嗣生 もすくらぶ(資料8-3

2017年から現在までに東海地方と関東地方に記録が見られる。

追記2020.8.8


付録3 幼虫の写真 資料9

幼虫のサイト
https://bugguide.net/node/view/708346https:/bugguide.net/node/view/708346


文献
宮野明彦(2020) 日本未記録のピンク色のノメイガ. 誘蛾燈. 239:1-2.

前田憲吾・吉安裕(2020) 滋賀県守山市で採集された北米からの移入種と思われ るPyrausta Inornatalis(鱗翅目ツトガ科ノメイガ亜科)ー日本における2番目の分布記録. 誘蛾燈. 240:43-45.

池ノ上・金井(2010) 夜間における蛾の訪花行動. 植物研究雑誌.
  85:246-260.
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_085_246_260.pdf

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ヒメアカタテハの渡りについて

2020-02-04 15:38:00 | 
 昨年(2019年)は、相模原市や町田市辺りではヒメアカタテハがとても多く見られました。


2019年初見のヒメアカタテハ 2019年3月13日 町田市

こんなに多いのには何かわけがありそうだ。ヒメアカタテハが多い南方からの渡りも関与しているのでは?と渡りの謎に関心を持ち始めていたところ、ヒメアカタテハの渡りについての報告が舞い込みました。

昨日届いた日本鱗翅学会発行の「やどりが」(資料1)に掲載された、ヒメアカタテハが真夏(2019年8月5日)の未明に船の甲板に群がってやってきたという報文です。

海外では、ヒメアカタテハが春に北アフリカからヨーロッパに向けて海を渡り、世代交代しながらイギリス辺りまで北上し、秋には南下して戻ってくることが知られています。北米でも同様な渡りが行われているようです。

日本ではアサギマダラの渡りがよく知られ、マーキング調査によってその渡りのルートも大分わかってきましたが、ヒメアカタテハの日本辺りでの渡りについては報告が今まで見当たりませんでした。 今回の報告は、新潟県村上市粟島沖10㎞の遊漁船での観察例で、月もない深夜未明に船の灯りに集まってきたという報告でした。真夜中に渡りをしているとは驚きの内容です。

 そこでヒメアカタテハの渡りについて何か手がかりがないものか、ネットで調べたところ、粟島にはヒメアカタテハが、畑があればどこにでもいた(2017年10月7日)という記事がありました(資料2)。沖合の小島にいた多数のヒメアカタテハは、渡りをしてやってきた可能性が大きいのではと思います。

 渡り鳥の観察ポイントになっている飛島(山形県酒田港から北西に39km)でも、アサギマダラのほかにヒメアカタテハがどっさり入っており、との表現で、渡りをする蝶として取り上げていました(資料3)。

 日本近辺ではヒメアカタテハがどこからどこに渡りをしているのか?これからの新知見の報告が楽しみです。

参考資料
1)大類雄一(2019) ヒメアカタテハの渡りを確認. やどりが. (263):33-34.
2)http://www.ybird.jp/nakano/index.cgi?mode=res_srh&no=463_201710
3)http://birder-yamame.air-nifty.com/bird/2008/10/20081017-19-e08.html

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