高層ビルの中にいる。
私は、窓ガラスの外に一人の男の姿を認めた。
男は向かいのビルの壁面、ひどく狭い足場の上に立っている。
危なげな立ち姿。
あっという間もなく、男は身体を宙に投げ出した。
窓を開けて顔を覗かせると、下から飛んできた何かが頬に附着する。
白っぽい有機的な欠片。
見れば遥か地上では、先ほどの男が頭の中身を撒き散らせて死んでいる。
私の頬に触れたのは――。
慌てて電話を取り、警察に連絡を入れるが、上手く喋ることができない。
電話の相手は気だるげで、私ばかりが焦っている。
男は死んでいる。
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