つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 三面鏡

2018-07-28 14:24:38 | エッセイ

エッセイ 三面鏡  【夏・自由課題】  2018年7月13日

夫が、欄間の掃除をしようと三面鏡の椅子に乗って転んだ。
脚が折れたから転んだのか、落ちたから壊れたのかは分からないが、付け根から折れた。
私は夫の怪我の心配よりも、長い間、家族が毎日座っていた椅子の、可哀そうな姿に溜息をついた。
折れたところを繋いでみたがどうしようもない。

家具売り場で新しい三面鏡を見て回ったが、どれも今のよりいいとは思えなかった。

何度か家具の修理を頼んでいるところに相談をした。
二代目の息子さんがやってきた。
少し白髪はあったが格好いいジーンズで精悍な体つきをしている。
前もそうだったが、我が家の木材を使った造作のこだわりなどを「好きです」と、今度も熱く語る。

椅子はきれいに直せると言う。
鏡の曇りも気になっていた。
新しい鏡に取り替えよう。
寸法を測る為、引きだしてみると大分草臥れている。
独り暮らしをする時、最初に買った物だが、もう寿命かもしれない。

修理しか頼んだことがないが、新しい家具も作るのだろうか。
「三面鏡は作りますか」と聞いた。
あっさりと、「作りますよ」と言う。頼むことにした。
翌日、木目のサンプルや金具のカタログを持ってきた。
出来上がった家具しか買ってこなかったので、サンプルを見ても見当がつかない。
迷うと、丁寧に説明をしてくれる。

それから三ヵ月余り、何の連絡も無かった。
あんなに熱く語ったのに腕の方は大したことがなく、上手く出来なくて困っているのではないかと、私も連絡をしなかった。

連休明けに、やっと電話が鳴り、これから運びますと言う。

吃驚した、前と同じ寸法の三面鏡が思った以上の物に出来上がっている。
鏡の縁も綺麗にカットされ、照明は今風のLED、抽斗は桐を使っている。
あの椅子も品のいい布に張り替えられ見違えるようだ。

「どうしても欲しかった蝶番がなくて、親父の伝手で探しました」。
何時もと違って、言葉少なに、はにかんでいるような笑顔を見せた。

  先生の講評・・・・・・・・職人気質と、独身時代の家具の思いがよく出ている。
                夫は怪我をしていないんだよね?

  つつじのつぶやき・・・依然と同じ寸法の三面鏡が新しくなって、本当に良かった。
               私だけではなく夫も息子たちも、ドライヤーを使い、コンタクトの挿入など
               毎日使ってきた三面鏡だ。
               
これから、しっかりしわも映してくれるでしょう。

              

コメント
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