エッセイ 八国山
今月の里山散策は八国山だ。
西武線の東村山駅や、西武園駅からのコースもあるが、今回は所沢駅からバスに乗り将軍塚で降りる。
途中、勢揃橋と言う勇ましい地名のバス停もある。
この辺りは鎌倉時代の古戦場跡で、当時八国山からは、駿河、安房、信濃等、
八国の山々が見渡せたというが、それほど高い山ではない。
映画「となりのトトロ」に出てくる七国山は、八国山がモデルと言われ、今は、そちらの方で知られている。
バスを降りて住宅街を抜け、緩やかな坂道を登り始める。
一昨日まで、台風の長雨が続いていたので、秋の遠足が延期になっていたのか小学生と幼稚園生の行列に挟まれた。
先生が気を使って「どうぞ」と道を譲ってくれるが、私たちにはたっぷり時間がある、ゆっくり歩きたい。
「いえ、お先にどうぞ」と列から離れる。
子供たちは口々に「こんにちは」と挨拶をしてくれる。
歩きなれた尾根道は道標も見ずに、足の向くまま、道草ばかりをしておしゃべりが続く。
道の端のコウヤボウキやミズヒキなどの草花が盛りだ。
所々に丸太で作った1メートル位のコの字を横にしたようなものがあり「靴の泥おとし」と書いてある。
先日までの雨で、湿った落ち葉やぬかりみもある山道は靴が汚れる。
靴底をこすり付けて泥を落とすのには具合がいい。
近くに東村山市の特産品としても紹介されている「八国ゆば」がある。
以前この散策で知ってから何度も買いに寄ったのだが、今回はルートの関係から行かなかった。
町の小さなお豆腐屋さんがやっている。
「この前頂いた湯葉、美味しかったわ」などと話すと、ご主人の話が止まらなくなる。
帰ってから包みを開けると、時々おまけが入っていることがある。
そろそろあの湯葉が食べたくなった。
チーズのようなねっとりした「生湯葉」、わさび醤油で新米のご飯、いいな。
課題【乾く・湿る】
先生の講評 過不足なく自然と人が描かれている。
言葉の選別が的確。