つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 赤いベレー帽 

2013-06-20 10:33:26 | エッセイ

エッセイ 赤いベレー―帽

独身時代、会社の同僚、安藤さん、林さんと、いつも一緒に行動していた時期があった。

私より3つ年下の、安藤さんと林さんが仲良くなって、その後に私が入ったように記憶している。

安藤さんは、眼鏡をかけていて、固太りの少し色黒、たっぷりの髪の毛をピンで留めたり結わえたり、学生の
ような雰囲気だった。

性格は気取り屋で、時々、首を少し傾げて「なぜ」と澄ました顔をする。

林さんは安藤さんと反対に、色白ですらりとした体、髪の毛も少し茶色だった。
性格はおっとりとした自然体で、目が合うと、すぐに笑いたそうな顔をする。

一番年上の私は、単純ですぐに「いいじゃない」が口癖だったらしい。

会社からの帰りは、いつもどこかに寄り道をする。
「どこに行こうか」などと言いながら、結局、洋服を見に行くこと
になる。時々、洒落たお店に入ると、安藤さんはすぐに声を潜める。
私たちはさっきまでのおしゃべりの余韻で笑ったりすると、「しっ」と唇に指をあて、静かにとの仕草をする。
私と林さんは急には変われなくて、首をすくめる。

安藤さんはある時期から、コンタクトレンズに変え、眼鏡をかけなくなった。そして眉毛を整え、口紅も変えた。
ピンでとめていた髪の毛は、額の真ん中で分けストレートに下し、すっかりお洒落に目覚めたようだった。

ある朝、少し遅れて、赤いベレー帽を被って出社してきた。
女子社員は「えっ」といった調子で顔を見合わせが、男性は大げさに「驚いた」と声を出した。

今から30年以上前のこと、女の子は日除け帽以外、帽子を被る人は少なかったので大いに目立った。

夕方、安藤さんはベレー帽を被らなかった。
林さんと3人でぶらぶら駅に向かって歩いていた時、「ワインレッドが、すごくきれいだったの」と言った。

ベレー帽を被るのは勇気がいる。

たまたま、ワインレッドが、ベレー帽だったと、言い訳をしているようだった。

課題 【服装・装身具】

コメント
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