音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ゴルトベルク変奏曲/曾根麻矢子 (ヨハン・セバスチャン・バッハ)

2009-10-12 | クラシック (ピアノ曲)


ゴルトベルクといえば、グールドの演奏であろうが、ここではやはりチェンバロの音を楽しみたい。そもそもこの「ゴルトベルク」は後世に付けられた曲名で、バッハのオリジナルは、「二弾の鍵盤をもつチェンバロのためのアリアとさまざまな変奏」とあっさりしている。ゴルトベルクとはドレスデン駐在のロシア大使カイザー・リンクに仕えていたチェンバロ奏者の名前で、バッハ自自身がこのカイザーリンク伯爵には色々な恩恵を受けていて、伯爵が不眠症で眠れない時にいつもゴルトベルクにチェンバロを弾かせていた。伯爵がゴルトベルクに弾かせるためにバッハに注文した「眠れぬ夜のため」の曲がこの変奏曲であることは、今更ここに書くまでもなく有名な話である。

しかし、この変奏曲は実に見事な構成である。そのすばらしさをこと細かく書き出すと、一覧表も必要になってくる(本当は表にすると、この曲が如何に立体的な構成か良くわかるのであるが)ので、ここでは少しだけ触れると、曲は全部で32曲出来上がっていて、最初と最後にアリアがある。映画「地球が制止する日」で、キアヌ演じる宇宙人が、思わず感動してしまう曲がこの「アリア」である。宇宙人が来襲してきても地球の唯一の救いはバッハなのである。そして、その後27曲の変奏が続くが、大きく分けて3曲ずつのひとまとまりのグループになっている。3曲目ごとの周期でカノンの変奏を置いていて、第3変奏を同じ高さのカノンから初めて、2度、3度、4度と一曲ごとに音程を上げている。つまり27曲目が9度のカノンになっているのである。さらにグループのはじめの曲は様々な舞曲やフーガ、メヌエットなど多種多様なスタイルの変奏をおき、これに対して2曲目は主題のアリアと同じ3拍子でテンポも一定というオーソドックスな変奏にしている。さらに真ん中の16変奏だけは序曲を置いていたり、最後の28、29、30の変奏はこれまでとは違う方式で28はトリル技巧、29はカデンツァ、30はクオドリペットという中世に流行った古い形式を用いている。ざっとこんな感じの構成である。しかし、「眠れぬ夜のため」の楽曲がこれだけ素晴らしいと「眠るための曲」ではなく、余計に覚醒してしまうと思うのは私だけであろうか。事実、この曲を就寝の際聴いていても、いつも最後まで聴いてしまう(尤も、私の場合クラシックの場合は殆ど睡眠に入るための曲にはならないが)。

曾根麻矢子はバッハを探究した最新版でもこの曲を扱っている。今年の熱狂の日では在京しておらず、彼女の演奏を聴き逃してしまったが、そもそもがチェンバロの音は好きなので、グールドも好きであるが、私はこのチェンバロ演奏アルバムが大好きである。チェンバロなんて、私にとっては博物館の展示品みたいなもので、如何に鍵盤出身であっても、実際に鍵盤に触る機会など今後も無いと思う(その前にチェンバロの前に座って弾ける曲なんて持ち合わせていない)。ゴルトベルクはチェンバロに限るのであるが、でも、今一度クラシックでの鍵盤演奏を始めたら、絶対にトライしてみたい曲である。


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