音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

アメリカの想い出 (ダン・フォーゲルバーグ/1974年)

2013-01-14 | ロック (アメリカ)


最近、2000年代のロックを中心に追っかけていたので、ついつい筆者に取って大事なアーティストのレビューを怠っていた。先日書いたシカゴなんかも、10代に筆者のポップ音楽の覚醒に多大なり貢献をしてくれたアーティストだし、ジャクソン・ブラウンスティーリー・ダン、そしてこのダン・フォーゲルバーグは、所謂「アメリカのロック」を理解する上では、キーマンになった方々である。でもそんな個人の思い入れが強すぎると、中々レビューが書けなかったりするのも事実。やはり音楽や美術を言葉で表現するには限界がある。

この作品はダンのセカンドアルバムで、タイトルは"Souvenirs"、「アメリカの想い出」という表題は、最初に日本盤が発売になった時のタイトルだったと思う。アナログ盤の帯にはこう書いてあったが、CDは"Souvenirs"になっている。デビュー作「ホーム・フリー」が今ひとつ売れ行きな伸びなっかたことを踏まえ、ダンはナッシュビルからロスへとその活動の拠点を移した。当時、ロスには次代の「ロックスター」を志す多くの才能が集結していたが、そこでダンは、かのジョー・ウォルシュと出会うがこれが彼の音楽人生の転機となった。ジョーといえば、イーグルスの超ヒット作品「ホテルカリフォルニア」の主要メンバーであるが、イーグルスに交流する前から、グレン・フライ、ドン・ヘンリー、ランディー・マイズナーとは交流があり、丁度、彼の3枚目のアルバム"So What"の録音中でもあった。ジョーはこの録音メンバーをそのままダンのセカンドアルバムの陣容に起用した。つまりこの2作品は略同時に製作された兄弟アルバムと言っても良いかもそれない。しかし、ここは筆者の好みで言ってしまえば、ダンの作品が数段出来は良い。またそれ以外にも当時のロスに滞在していたビッグ・アーティストがこの作品には顔を連ねていて、中でもドラムのラス・カンケルとダンは相当意気投合したらしく、その後のダンの作品には殆ど参加している。前作ではダンの素朴な面、芸術家としての純粋さだけが目立ったが、本作ではさすがにその芸術家としての視点は残しつつ、ポップ音楽としてのオトがかなり洗練されており、所謂、「お金を取って人に聴かせる」音楽になっているのだが、一概にこれがすべてジョーの功績ではない。ジョーは確かにプロデュース能力は秀でていたものの、ダンの音楽をジョーの色に染めてしまったのでなく、ダンの前作が、音楽性が高いのにどうして「多くの人に受け入れられる音楽」ではなかったのかということを、彼の交友関係における多くの「志の高いミュージシャン」を通しいてダンに教えたのであろう。"Part Of The Plan"などは、その象徴で、前作にはない売れ筋のフレーズを出しているし、一方では、"As The Raven Flies"では後々のイーグルスを彷彿させるツインリードギター演奏をみせている。また、後年ライヴでのエンディング曲になる"There's A Place In The World For A Gambler"は、彼が挑んだ初めての大作であろう。

こうしてダンは、有難いことにアメリカでもそこそこのミュージシャンとなり、日本でも然程タイムラグがなく日本盤が発売される様になった。ただ、筆者はこのころ彼とはリアルでは知り合っておらず、但し、ジョーウォルシュの方は知っていたから、本当にすぐ近くまでは接近していたのである。だが、その時分に聴いていたら果たして彼に感動していたかどうか? そう、筆者は彼に出会った際はアメリカのロックに失意を持っていたときだったから、新鮮に、そして自然に受け入れられた。音楽との出会いはなにが幸いするか分からない。


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