加藤陽子は東大教授の歴史学者。
日本近現代史の大家でかつて高校の山川歴史教科書を執筆した伊藤隆の弟子にあたる。
ただ、この弟子は伊藤隆に似ない。
まづ、思想性向が異なる。
同じく伊藤隆の弟子である私の師は加藤陽子を「サヨク」と呼んで憚らない。
その表現が妥当かどうかはおくとして、彼女は日中戦争以降の日本史を軍部が暴走したというお定まりの構図で捉える。
このあたり、「日本ファシズム」という表現を嫌い、自身の著書では決して使わなかった師匠との色の違いが際立つ。
加藤陽子は伊藤隆の後を継ぎ、山川の歴史教科書の執筆を担当したが、完璧な記述と云われた伊藤隆の文章をずたずたに改竄してしまった。
その記述の杜撰さは秦郁彦の「欠陥だらけの山川教科書『詳細日本史』執筆者の正体」(『現代史の対決』所収)に詳しい。
一例を挙げると、南京事件の死者を日本の大虐殺派も採らない「四十万人」としているなど、なぜそのような改悪をしたのか首を傾げたくなるものが多い。
単純な用語の間違いや恣意的な表現など、これまでになかった不適切な記述も多く、以前の教科書に戻してくれと云いたくなるほどだ。
この教科書が使われ始めたのが2003年4月から。
その年以降に日本史を選択した高校生は気の毒としか言いようがない。
加藤氏はいわば不肖の弟子だが師匠から受け継いでいるものもある。
それは、あらゆる史料を丹念に読み、論を組み立てていくという点だ。
だから、自身の思想は別として政治主義が入りにくい。
一般に政治的に偏った人物が歴史を記述すると自身にとって都合の良い史料ばかりを取り上げて恣意的に記述することが少なくない。
これは、戦後の日本では特に左翼学者に多かったが、最近は右も似たようなものだ。
それら政治主義学者に比べ、伊藤氏も加藤氏も恣意的な記述は少ない。
その意味で伊藤隆も加藤陽子も史料主義者と言えるが、師匠がマクロな視点も加味したのに対し、加藤はそのような視点が抜け落ち気味だ。
それゆえ、全体の流れが掴みにくい。
そして、詳細な記述にこだわるあまり、却ってミスが増える。
山川教科書の記述ミスの多さもそれが原因だろう。
ついでにいうと、文章が非常に読みにくいのも師匠のそれを受け継いでいる。
その加藤陽子が新刊『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を出したことをホリデーさんのボイスメッセージで知った。
アマゾンを覗いてみると、やたら評価が高いが、読まずとも内容がわかるところが少し哀しい。
********
追記:南京事件の死者の数については、見本本では「犠牲者数ついては、数万人~40万人に及ぶ説がある」と記述されていたが、多くの批判を受け、使用本では「南京陥落の前後、日本軍は市内外で略奪・暴行をくり返したうえ、多数の中国人一般住民(婦女子をふくむ)および捕虜を殺害した(南京事件)」との記述に変更されている。
(平成二十二年五月十二日)
日本近現代史の大家でかつて高校の山川歴史教科書を執筆した伊藤隆の弟子にあたる。
ただ、この弟子は伊藤隆に似ない。
まづ、思想性向が異なる。
同じく伊藤隆の弟子である私の師は加藤陽子を「サヨク」と呼んで憚らない。
その表現が妥当かどうかはおくとして、彼女は日中戦争以降の日本史を軍部が暴走したというお定まりの構図で捉える。
このあたり、「日本ファシズム」という表現を嫌い、自身の著書では決して使わなかった師匠との色の違いが際立つ。
加藤陽子は伊藤隆の後を継ぎ、山川の歴史教科書の執筆を担当したが、完璧な記述と云われた伊藤隆の文章をずたずたに改竄してしまった。
その記述の杜撰さは秦郁彦の「欠陥だらけの山川教科書『詳細日本史』執筆者の正体」(『現代史の対決』所収)に詳しい。
一例を挙げると、南京事件の死者を日本の大虐殺派も採らない「四十万人」としているなど、なぜそのような改悪をしたのか首を傾げたくなるものが多い。
単純な用語の間違いや恣意的な表現など、これまでになかった不適切な記述も多く、以前の教科書に戻してくれと云いたくなるほどだ。
この教科書が使われ始めたのが2003年4月から。
その年以降に日本史を選択した高校生は気の毒としか言いようがない。
加藤氏はいわば不肖の弟子だが師匠から受け継いでいるものもある。
それは、あらゆる史料を丹念に読み、論を組み立てていくという点だ。
だから、自身の思想は別として政治主義が入りにくい。
一般に政治的に偏った人物が歴史を記述すると自身にとって都合の良い史料ばかりを取り上げて恣意的に記述することが少なくない。
これは、戦後の日本では特に左翼学者に多かったが、最近は右も似たようなものだ。
それら政治主義学者に比べ、伊藤氏も加藤氏も恣意的な記述は少ない。
その意味で伊藤隆も加藤陽子も史料主義者と言えるが、師匠がマクロな視点も加味したのに対し、加藤はそのような視点が抜け落ち気味だ。
それゆえ、全体の流れが掴みにくい。
そして、詳細な記述にこだわるあまり、却ってミスが増える。
山川教科書の記述ミスの多さもそれが原因だろう。
ついでにいうと、文章が非常に読みにくいのも師匠のそれを受け継いでいる。
その加藤陽子が新刊『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を出したことをホリデーさんのボイスメッセージで知った。
アマゾンを覗いてみると、やたら評価が高いが、読まずとも内容がわかるところが少し哀しい。
********
追記:南京事件の死者の数については、見本本では「犠牲者数ついては、数万人~40万人に及ぶ説がある」と記述されていたが、多くの批判を受け、使用本では「南京陥落の前後、日本軍は市内外で略奪・暴行をくり返したうえ、多数の中国人一般住民(婦女子をふくむ)および捕虜を殺害した(南京事件)」との記述に変更されている。
(平成二十二年五月十二日)