(101 二足歩行術 begin)
101 二足歩行術
スフィンクスは、目の前を通りかかる旅人に謎をかけて、回答できないことを理由に食べ殺していました。
「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足。これは何か」。オイディプスに「それは人間だ」と答えられると、谷底へ身を投げて死んだ、といわれています。
人間は一歳の誕生日前後で二足歩行するようになりますが、初めはすぐ転ぶ。起き上がりがうまくできることが二足歩行の最重要課題です。
次に、転ばずに歩き続けるためには、安定した歩行術というものを身につけなければいけません。一歳児は毎日毎時間の練習の末、これができるようになります。大人はこの技術の習得が完了しているので、無意識でも転ばずに歩ける。老人になると注意を怠ると転ぶ。杖を使っても自由にはいきません。
二足歩行という運動を実現するためには、二本の脚を持っていて、そこについている筋肉が使える必要があります。それだけではだめです。連続的な筋肉運動を動的に安定させるための制御回路を、脳内に装備している必要があります。
二足歩行する人体の体軸は常に倒れ続ける。足の筋肉を動かして、倒れる方向に体重を移動することで重心を保つことができる。つまり必要な筋肉が周期的に収縮と弛緩を繰り返して動き続けることで静かにゆっくり重心の移動が行われます。
これに特化した特殊な制御回路が必要です。脊髄腰部と脳の中心部にあるこの制御機構の回転が阻害されると、よろよろと倒れてしまいます。
後期高齢者の筆者はスフィンクスの言うところの三本足で移動すべき時期に達した人間ですが、杖を使うのは面倒なので、ふつうは二本足で、足元に多少用心しながら、歩きまわっています。先日、本屋の店内で、椅子の足につまずいて転倒してしまいました。
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