そのように自分の身体を描き出す科学の強い存在感を感じとり、それが描き出す物質世界を唯一の実在する現実の世界だと私たちは思う。しかし(拙稿の見解では)そこに現代人の大いなる間違いがあります。ここに哲学が大きく間違ってしまう分かれ道がある。よほど注意して見なければ、その分かれ道のところから正しい道が通じていることに気づくことはできない。しかし、見えにくいけれども、正しい道は真ん中に通っている。
それは無意識の呼吸運動のように、私たちの身体が自律的に動き続けているところからすべての現実が生まれているという事実です。自律的に動き続ける身体をうまく誘導して(食べ物を獲得するなど)生存に必要な運動を効率的に実行するために、(拙稿の見解では)私たちの身体は、現実を感じとる装置を身につけるようになった。逆に言えば、それを現実と感じとれば生存に便利なような感じ方ができるものが現実となった。そういう現実が感じとれるように進化した動物の子孫が私たちだからです。
拝読ブログ:「何程も歎き候へ。」 沢庵宗彭