この間、構内で一番日当たりのいいラウンジでぼんやりしていたら、通りかかった院生の渡辺さんがお茶をおごってくれた。卒論を無事に出せたお祝い、だそうで、このところおごることはあってもおごってもらうことなんかめっきりなくなってしまった僕は、ありがたくごちそうになることにした。
それで、そのラウンジの片側は一面がガラス張りになっているんだけれど、そこから外を眺めていると、芝生に鳥がやってきた。なかなか可愛らしかったので、窓に張り付きながらなんとなく
「あれなんて鳥かなあ」
と呟いたら、「あれはムクドリね」と渡辺さんが言ったので、まさか答えがかえってくるとは思わなかった僕はへえ、と思ってあらためてしげしげとその鳥をながめてみたんだけれど、もしまたこの鳥をみてもやっぱり「なんて鳥かなあ」って言っちゃいそうだと思った。
それにしても、覚える気もないくせに、「これはなんて名前かなあ」と考えちゃうのはどういったわけなんだろうね。