イバラノツルヒコの華麗なる生活

ボンソワール、今夜も僕と素敵な話をしよう

冷たい雨の降る日には

2004-12-30 20:14:29 | Weblog

密かに僕を待っていてくれた皆、すっかりサボってしまってゴメンね。
このところ忙しかったけれどおかげでいろいろな面白いことがあったんだ。そのことはおいおい話していこうと思う。
ところで昨日は多くの場所で雪が降ったらしいけれど、僕の家のあたりではすぐ冷たい雨にかわってしまった。僕は雪景色が好きだからちょっと残念だったし、なによりこんな日には散歩をする気にもなれない。
それで僕は、突然、シュー・ア・ラ・クレームでも作ってみようと思い立ったんだ。

え、僕はパティシエなのかって?

とんでもない!

でも不思議なことに、昨日はむしょうにそれをやってみたくてたまらなくなったんだ。
おかしいよね。
もうせん妹が遊びに来たときに(妹のことはいずれ話をすると思う)、忘れていった御菓子の本が目に止まったのが運のつきだった。

何故シュー・ア・ラ・クレーム(僕は間違っても「靴クリーム」なんて呼ぶ気はない)を作ることにしたかというと、第一に僕の好物だったこと、そして現実的な側面として家にある材料で作れそうなものがこれだったってこと。

それで僕は忠実に、本にしたがって(ということは「マリーおばさん」のいうことにしたがって、ということになる)材料を計り、バターとミルクを煮立て、生地をオーブンに丸く絞って焼くところまでこぎつけた。
我ながらいい手際だった!

それでどうなったかというと、

…まあ、聞かないで欲しい。察することで満足してくれると嬉しいんだけれど。
何しろマリーおばさんの本には「生地がふくれるまで決してオーヴンを開けないこと」とは書いてあったけど、「ふくれてもまだ開けないこと」とは書いていなかったんだよ。

さて、見た目は英国名物のヨークシャー・プディングそっくりの(味も似たようなものだったかもしれない)それらを前に途方に暮れている僕に電話がかかってきたのはそのときだ。

電話は秀虎からで、今からそっちに行ってもいいかと言う。
僕は、構わないけれど、今日は何ももてなすものがない、こういう状態の不思議な物体以外には、と伝えた。ヤツは不審そうな声で、でもまあ、もう近くまで来ているから行くよ、といって電話を切った。

しばらくして、あきれたことに秀虎は悪友を3人もひきつれて我が家に乗り込んできた。食べるものがないんじゃしょうがないから、といって近くの店で買ってきたのは、チーズやハムはともかく、海苔の佃煮やらタラコやら。
もちろんそれは、山ほど買ってきた酒類のためのオマケみたいなものだったけど。

さて、この話には一応妙なオチがついていて、秀虎たちが買ってきた酒のつまみは、僕のつくった「かつてシュー・ア・ラ・クレームになろうとした者たちの残骸」のうえに乗っけられて、一同のお腹におさまることになってしまった。
はじめにこれをやろうと言い出したのは例によって秀虎で、何しろ僕は本来御菓子になるべきものなんだからその取り合わせは無茶だと思ったのだけど、やってみたらこれはこれで悪くなかった。
はじめはおそるおそる、チーズなんかをのせていたんだけれど、しまいにはタラコや佃煮も当たり前のように乗せられて、で、これもこれで悪いことはなかった。

そんなわけで、僕は大量の御菓子のなれのはてを前に処理について悩む必要はなくなったのだけれど、代わりに飲みつぶれて大音量の鼾でころがる4人の男どもをどうするべきかで途方にくれるはめになったのだ。

今日の話はこれでおしまい。