月あかりの予感

藤子不二雄、ミュージカル、平原綾香・・・好きなこと、好きなものを気の向くままに綴ります

「耳をすませば」絵コンテ

2006年09月18日 16時26分02秒 | 映画/テレビなど
悩んだ挙げ句、やっぱり買ってしまいました(^^);

耳をすませば
スタジオジブリ絵コンテ全集〈10〉

徳間書店
詳細

耳をすませば」の絵コンテは宮崎駿さんの手によるものですが、前半1/3位は近藤喜文監督によって清書されているので、たっぷりと近藤さんのタッチを味わうことが出来ます(^^)

宮崎さんのコンテは「千と千尋の神隠し」もそうでしたが、わりとラフ※に描かれているのに対して、近藤さんは的確な線で丁寧に描かれているのが特徴です。2人のタッチを見比べてみるのも面白いです。「耳すま」と同時上映された、宮崎監督の「On Your Mark」のストーリーボード(カラー)&絵コンテも収録されているため、宮崎ファンとしても見逃せません。

近藤さん
参考までに画像を掲載しておきます。かなり見づらいですがご容赦ください。(それぞれクリックで拡大します)

※ラフといったって、一般的なアニメに比べれば十分緻密な描き方です。私は「ドラえもん」のコンテ(もとひら了さんの手によるもの)のコピー等も持っていますが、もっとシンプルに描かれています。原恵一さんのコンテも同様でした。ところが同じ「ドラえもん」でも、芝山努さんのコンテは、ちょっとビックリする位に緻密です。コンテを緻密に描くかラフに描くかは、描き手や演出の意図等によっても異なるのでしょう。
宮崎さん

高畑勲監督の「おもひでぽろぽろ」の絵コンテは、百瀬義行さんが描いたものを、そのまま拡大コピーし、それをレイアウトとして使用したそうです。そのままレイアウトに転用出来るほど緻密に描かれているということなんですが、近藤さんの絵コンテの描き方は、そちらに近い気がします。まだ読んではいないんですが「火垂るの墓」の絵コンテは近藤さんも描かれているので、高畑さんの影響が強いのかもしれません。「耳をすませば」の近藤さん清書部分も、そのままレイアウトに出来そうな緻密さです。最初は全ページ清書するつもりだったんじゃないでしょうか。たぶんスケジュール的に難しかったんじゃないかと思います。

「耳をすませば」は、宮崎さんが絵コンテを描いているため、構成的にはかなり宮崎テイストの強い作品になってはいますが(それが悪いという意味では決してありません)、出来上がった映画は、決して宮崎カラーだけには染まらず、近藤さんの優しさがにじみ出た作品になっています。エンディングでは主題歌「カントリー・ロード」にあわせて、様々な人々が行き交うシーンが描かれていますが、絵コンテではそのシーンは4コマしか描かれていません。このシーンの丁寧な描き込みも、近藤さん自身の演出によるものなんだなぁと思うと、なんだか嬉しくなってしまいます。

近藤さんの絵をはっきりと意識したのは高校生の頃、「おもひでぽろぽろ」が最初でした。それまでの浅はかな私は、ジブリの絵ってのはどれも同じ(笑)というような印象を持っていたのですが、山形編の緻密な描写を各種資料でじっくりと拝見して、この人ってすごいアニメーターだ!と意識したのでした。「おもひでぽろぽろ」という映画そのものは作品として成功しているとは思えませんが、高畑監督の高度な演出要求をここまで形に出来たのは、やはり近藤さんだからこそだと思います。

「トトロ」「火垂るの墓」を宮崎監督、高畑監督がそれぞれ制作した際、高畑監督は「他は何もいらないから近ちゃん(近藤さん)だけは欲しい」とまで言われたそうです。両監督による近藤さん争奪戦です(笑)。結局、宮崎さんは自分でも絵が描けるんだから、ということになって、近藤さんは「火垂るの墓」班に入ったそうです。確かに「トトロ」は宮崎さん&作画監督の佐藤好春さんのコンビで、大変素晴らしい作品に仕上がっていましたが、「火垂るの墓」に近藤さんがいなかったら、作業はますます難航していたんじゃないかと思います。だけど、近藤さん自身が作りたかった作品は「トトロ」の方だったような気もします。「耳をすませば」については、近藤監督自身が、原作者・柊あおい先生との対談で、思春期の子どもたちを主人公にした「トトロのいないトトロ」をやりたかったという趣旨の発言をしているのも興味深いところです。(この対談は集英社文庫「耳をすませば」で読めます)

実は以前、「On Your Mark」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」で作画監督を務めた安藤雅司さんの責任編集による「近藤喜文の仕事~動画で表現できること~」という本がジブリから発行されました。近藤さんの原画やイメージボード、キャラクターデザインのラフなど、膨大な量の絵が収録されていました。こんな貴重な資料はすぐにでも復刊して欲しいと思うんですが、安藤さんのジブリ退社による影響か、復刊ドットコムでの交渉は難航(というより「残念」状態)しているようです。

私はその本を発売当時にジブリの通販で購入したのですが、私以上に近藤さんからの影響を強く受けていた元妻に、離婚の際あげてしまいました。当時はまさか離婚するとは思わなかったので、1冊しか買ってなかったのが悔やまれます。コピーくらい手元に残しておけば良かったなぁ(^^);


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