小さい頃に熱のせいで片足が不自由になった親父。
当時は,そんな親父が世間から認められる訳はなく,
いじめる奴らは,鍛えた体で逆に張り倒した親父。
本当は,親父の親父がやっていた魚市の競り人をしたかったのでござるが,
当時はとうていできない商売。
親代わりの親父の祖母が,
座っていてもできる商売と云うことで,
スーツをつくる職人になった。
中学もろくにでたのかしらないが,
弟子入りし腕を磨いた親父。
つるされて数万円で売れるスーツが流行る中,
1着1着手作りの,着る人の体にあった,
そうね,肩のラインと襟のラインと自然な皺が出るスーツね・・・。
目が見えなくなり,指が動かなくなるまで続けられたのは,
日々,1着にこだわったおかげだ。
今は,孫とポーカーをするのがうれしいようでござる。
気が短かった親父の面影は薄いでござるね。