弁護士辻孝司オフィシャルブログ

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まいう~!事実を積み上げて語らせる。                      ~弁護技術を生活に vol.9~

2012-07-10 09:28:36 | ブログ

   

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テレビではグルメ番組が大流行。

「まいう~!」や「食材の宝石箱や!」といった決めゼリフも有名になりました。

最近は、若手お笑い芸人がグルメリポーターをしていることも多いのですが、「おいしい!」とか、

「うまい!」としかコメントできないと、スタジオから「ふつう~」「レポーター失格」などと、

厳しいつっこみが入ります。

どうして、このコメントではダメなのか?

「美味しい」という結論しか言っていないために、どうして美味しいのかが聞いている人にまったく

伝わらないからです。

「鰹のだしがよく出ている。」「隠し味に入れたウスターソースが活きている」「舌に乗せた瞬間に

とろけてしまうくらい柔らかい。」「しゃきしゃきした歯ごたえがいい」「表面の焦げたところが香ば

しい」「わずかな塩味が甘さを引き立てている」とか、そういった具体的な事実の裏付けがないと、

誰も「美味しい」とは感じてくれません。

     

裁判の証人尋問も一緒です。

結論を聞くのではなく、事実を積み上げて、積み上げた事実たちに結論を語らせます。

 

 

Photo

 

例えば、殺意が問題となっている事件で、被告人は被害者と仲が良かったので、殺すまでの

ことは考えていなかったということを言いたい時に、

   

弁護士:「あなたは、被害者とはどのような関係でしたか。」

被告人:「親しく付き合っていました。」

弁護人:「親しくしていた被害者をどうして包丁で刺したのですか?」

被告人:「その時は、すごくなじられたので、思わずカッとなって脅してやろうと思って包丁を出したんです。そうしたら、被害者が向かってきて刺さってしまったんです。」

弁護人:「あなたは、被害者を殺そうとしたのではないのですか?」

被告人:「そんなことはありません。ずっと仲良くしてたんですから。」

という尋問をしたらどうでしょう。

被告人の言い分(結論)は出ていますが、具体的な事実による裏付けがないので、言い

放しで終わっており、少しも説得的ではありません。

    

事実を積み上げる。

例えば、こんな風にします。

弁護人:「あなたは、いつ被害者と知り合ったのですか?」

被告人:「5年前です。」

弁護人:「どこで知り合ったのですか?」

被告人:「そのころ、よく行っていた居酒屋です。」

弁護人:「どういう風にして知り合ったのですか。」

被告人:「居酒屋にテレビが付いていて、野球中継をしていたんです。それで、被害者も私も阪神ファンで、一緒に応援するようになって親しくなりました。」

弁護人:「あなたと被害者は、どれくらい居酒屋に行っていたのですか?」

被告人:「阪神の試合のある日は、ほとんど毎日行っていました。」

弁護人:「試合を見ながら、どのように過ごしていたのですか?」

被告人:「ひいきの選手を応援したり、やじったり。」

弁護人:「阪神が勝ったら、どうしてましたか?」

被告人:「二人で大声で六甲おろしを歌いました。」

弁護人:「阪神が負けたら、どうしてましたか?」

被告人:「監督の悪口を言ったりして、二人でなぐさめあってました。」

弁護人:「居酒屋以外には、被害者とどんなところで会いましたか?」

被告人:「甲子園に行ったり、サウナに行ったり、お互いの部屋に行って酒を飲んだことも何度もあります。二人で弁当を作って、花見に行ったこともあります。」

弁護人:「どんなお弁当を作ったのですか?」

被告人:「被害者がきんぴらゴボウが好きだというので、私が作って入れました。」

    

・・・・・ こうして事実を積み上げていけば、「仲が良かった」という結論を言わなくても、聞いて

いる人には、二人の仲が良さが伝わることでしょう。

   

結論や意見を押しつけるのではなく、事実を積み上げて、事実に語らせる。

グルメリポーターのみならず、人を説得するためにぜひ活用してみてください。


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1 コメント

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裁判の証人尋問テクニックの向上もさることながら... (oohata kyoko)
2012-07-11 22:59:08
裁判の証人尋問テクニックの向上もさることながら、先生には「法曹増の見直し」を不審視する京都新聞社説記者に、食べられる職業としての弁護士であるべきと教えてほしい。⇒4月21日京都新聞社説「法曹増見直し 市民のニーズはあるはず」
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20120421_4.html

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