今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・毛勝山

2014年09月22日 | 山登りの記録 2014

平成26年9月14日(日)
モモアセ山2,023m、毛勝山2,414.4m

 先週は久々に東北に遠征したが、今回の3連休は休みになる随分前から晴れの予報が出ている。この夏以来3日も晴れが続くことも珍しいのに、オマケに3連休だ。どうあってもアルプスは大混雑だろう。あいにくと、今回は土曜の都合が悪くて山には行けないので、夏からの持ち越しであるアルプス第2弾はダメだ。でも後の2日は山に行くことができる。人が多い所は遠慮するが…。どこへ行こうかと考えていて、急に思い立って富山の毛勝山に行くこと決めた。毛勝は昔から憧れの山の一つだ。道が無かったこの山は、かつては残雪期しか登ることが出来なかった。残雪期の山の範疇でも、急峻な雪渓を登るから難しい山の部類に入る。そんなことから、家からも遠い毛勝三山は登山雑誌等でその写真を見るだけの山だった。

 その毛勝山(けかちやま・地元では“けかつ”とも呼ぶらしい)に夏道が出来たと知ったのも、実はしばらく前になる。他の釜谷山と猫又山にも道が出来たが、それぞれ単独で登る道しかなくて、標高差は1500mあまりあるから、道が出来たと言っても、そんなに簡単な部類の山ではない。実は最近『分県ガイド富山県の山』の新版が出たので、それをめくっていたら毛勝、猫又の夏道がそこに紹介されていた。毛勝と猫又や釜谷をいっぺんに登るのはとても無理だろうが、これらの山ならば3連休でも人が溢れるなんて事は無いだろう。ガイドブックにも『技術、体力あるもののみ許される…』とただし書きがあるので、夏道ができたといっても人が溢れる様な山ではない。その上、この夏道も公認の登山道ではなく地元の山岳会などが拓いた、いわばプライベートルートということらしかった。標高差1700mでコースタイムでは往復11時間とあるから、これだけ見ても敬遠する人は多いだろう。ならば行くのみで、土曜の午後遅く家を出て高速で富山に向かった。

 2週続けて遠出だ。ガソリンも高いし高速代もバカにならないが、これが『趣味の世界』なので妻もあきれた顔をしながら、気をつけてねと見送ってくれた。3連休でも、休みに入ってからの夕方になるとそうバカな渋滞も無いと踏んだのは正解だった。夕方4時半に家を出る。関越も北陸道も肩透かしを食らったくらい空いていて、途中のPAで休みながらでも夜9時前には魚津ICを降りた。直線距離では150kmくらいしかないのだが、大きな山脈を大回りして行くので350kmもある。先週の宮城山形県境の笹谷ICよりも遠いのだった。途中のPAで食べた夕食の量が少なくてお腹が空いてしまった。魚津ICを降りてからコンビニでなにか買って食べようと思ったのが甘かった。事前に調べておいた地図ではICから登山口まで20km以上あるから、その途中にコンビニの一軒ぐらいあるだろう…でも、それは関東での常識で北陸では通用しない。どんどん山に向かって行くのも店が無かった要因?だろうが、田んぼの夜道を走っているうちに何時の間にか水力発電所の分岐になって、山の中に入っていく道になってしまった。残念ながら、20数キロの道のりにコンビニはおろか、食べモノを売っているような店すらなかった。うーん、やっぱり北陸の農村地帯はこんなのが普通なのだろうか。山道を奥に進むと、ま新しそうなキャンプ場がある。事務棟と思われる木造の建物の前には飲み物の自動販売機が並んでいた。道沿いにある駐車場には車が1台も無いが、ロープが張られている構内には2,3台の車が見え、キャンプをしている人も居る様だ。駐車場に車を停めて、コンビニで食料を調達できなかったので、行動食用に予備に買っておいたアンパンを食べた。キャンプ場の炊事場で歯磨きをしてさらに道を奥に進む。

 道はキャンプ場のしばらく先で未舗装になってから、数キロ先で右手に水力発電所の建物らしいものが片貝川を挟んで対岸に見えた。そこがかつての発電所の建物で、現在は宿泊用に使われている片貝山荘らしい。橋のたもとには車が1台停まって建物の中は照明が点いていた。その先でまた対岸に橋が架かり、来た道はこの先で通行止めだった。橋の脇に5台程車が停まっている。ここがガイドブックに出ている毛勝山登山口に向かう阿部木谷林道分岐らしい。橋を渡って左側直ぐに広い駐車場があるはずだが、橋を渡ったそこにはクサリが張られ『関係者以外の立ち入り禁止』と書かれたプレートがぶら下がっていた。分県ガイドに紹介されている駐車場は、そんな訳で現在はそこまで進むことができないから利用不能の状態だ。広い駐車場の先にも登山口まで幾つか駐車できるスペースがあるが、阿部木谷林道には入れないので現在のところ毛勝山に登ろうとする人が駐車できる可能台数はかなり少なくなっているから注意が必要と思われる。

 仕方なく橋のたもとに戻るが、そのわずかな余地には先に停まっている5台の車以上の車を停めることができない。少し戻ってやや道幅が広がっている脇に寄せて車を停めた。朝になって気がついたが、ここは片貝側の僧ヶ岳登山口脇だった。時刻は夜の10時近い、コースタイムで11時間とあるから大分陽が短くなってきたので、できる限り早出する必要がある。4時半起床で5時出発として直ぐにシュラフに潜った。

 4時半にアラームが鳴る直前に目が覚めた。少し寒い。外はまだ真っ暗で、ヘッドランプを点けて登る様だ。パンを食べて支度を済ませ、4時50分に少し薄明るくなってきた阿部木林道をクサリを迂回して奥に進む。しばらく先の山の上に先行者のヘッドランプがゆらゆらしているのが見える。車の中で支度をしている時にも橋の所に停めている車から人が出て行った音が聞こえた。矢張り長丁場の山、陽も短くなっているので、みな早立ちだ。阿部木谷林道はぐねぐねと蛇行して登っていく、入口から200mの所に登山口があると書かれていたが、暗かったせいもあり、見過ごして500m以上歩いているのにおかしい?と気づいた時は、阿部木谷に渡してある大きな堰堤の所まで登ってしまった。引き返してずっと下で赤テープがひらひらする登山口を見つけて、ようやく登り始める。往復15分くらいロスした…。
 赤テープがひらひらする木の枝の下に、読めなくなった小さな木製プレートがあった。帰りに良く確かめたが、『毛勝山登山口』と書いてあるらしかったが、薄く「勝」の字しか確認できなかった。シナノキの巨木やブナ等が茂る笹の切り開きがちょっとあって、直ぐによじ登る様な急登が連続する。トラロープが垂れた所も多く、滑りやすい湿った土の急斜面の道が延々と続く。上りはロープより木の根にすがった方が良いが、下りはトラロープを大分利用した。

 一気に300m程登って、尾根に合流するとやや傾斜が緩んで、1,479m三角点までは普通の登山道という感じの傾斜になったが、良く踏まれた道ながら決して歩き易い道ではない。木々の間から僧ヶ岳が見えている。尾根沿いに杉の巨木が並んでいるが、これは立山杉と呼ばれているらしい。地元の有志(山岳会の方々か?)と思うが、笹がずっと刈られていて、倒木や張り出した枝も極力切って処理している様だ。こんな急峻な道を手入れされている方々には頭が下がる。後ろからペースの速い3人組が追いついて来たので道を譲る。長丁場だから、急いだからといって早く着ける訳でもないから、マイペースでゆっくりと登っていく。7時12分に道の脇にひっそりとある1,479m三角点を過ぎる。尾根は所々で北の眺めがあり、片貝川対岸の僧ヶ岳から駒ケ岳に続く稜線が目の前だが、まだここよりは大分高く見える。

 ご夫婦の2人連れを抜いた後、今度は若い2人組に抜かれるが、みなそれぞれ自分のペースで登っている。直ぐ左手に見えていた僧ヶ岳が、高さこそまだ同じ位まで達していないが、少しずつ後ろになっていき、それに変わって駒ケ岳が近づいてくる。8時25分に小さな岩のある展望の良い場所に出ると、登っている北西尾根は今までの尾根というよりも稜線といった雰囲気になってきた。登り始めてここで初めて一息ついた。更に登り続けて大きな岩を薄暗い北側から巻くと、その先からは眺めの良い登りがずっと続くようになった。向かいに駒ケ岳が大きく、僧ヶ岳は大分遠のいた。駒ヶ岳の南にはやや低いながら大きな岩壁がある鋭角のピークが2つ見える。地図を見るとサンナビキ山(滝倉山)とウドノ頭と思われるが、ウドノ頭は砲弾の様な岩峰だ。残念ながらその山並みの向こうに見えるはずの白馬連峰方面は雲が蓋をしていた。向かう上部はモモアセ山と思われる樹林のピークがまだ高い。モモアセ山の右手には、これが毛勝山と勘違いしていたが、毛勝南峰がまだまだ高くどっしりとアルプス級の山容で見えている

 行く手に高く見えた樹林を越えると、少し下って凹地に小さな池がある。二重山稜の凹地には草地が広がって北よりの一番低いところが池になっていた。ここがモモアセ池で周辺は池原の草原と呼ばれている。9時6分にモモアセ池を通過。草地にはオヤマリンドウやハクサンボウフウ等が見られる。ここで休んでいた年配の3人グループ(うちお1人は身体の調子が悪い様だ)を抜いて斜めに草地を登ると尾根の1コブに過ぎないモモアセ山に登り上げる。振り返ると下に見えるモモアセ池の上に駒ケ岳が浮かび、南に続く稜線のウドノ頭のピークは正面下に見えている。ここでやっと2000mを越えた。この先は、小さな樹林のコブを越えて草地の凹地に出ることを2回繰り返して、毛勝本峰が正面に高く始めて姿を現した。こんなに登っても毛勝山はまだ遥かに高く見える。モモアセ山までの間右手に時々見えていたピークは見上げる三つ並んだコブの一番右で、これは南峰、その隣に小さなピークがあって、毛勝本峰は一番左端のピークらしい。毛勝山に続く北西尾根の最後のコブを越えると、また段状の草地が現れた。清水の原(しょうずのはら)と呼ばれる小草原で、ここにクワガタ池という小さな池がある。ここでも2人の先行者が休んでいた。クワガタ池は澄んだきれいな水が貯まっている。池の形がクワガタに似ているということだが、上から見下ろさないと良く分からない。クワガタ池に10時6分に着く。ここから見上げる毛勝の上りがあまりにきつく見えるので、少し休もうかとも思ったが、かなり早朝に出発していったと思われる人が、2人ほど相次いで上から降りてきた。最初の人はかなり若い単独、次の人はぼくと同じくらいの歳の単独の人で、この人が「これを登りきれば頂上ですよ」と言ったので、休まずそのまま登ることにした。

 それにしても、毛勝の最後の登りは草付きのきつい登りだ。清水の草原から一気に300m登るのだから、この山は最後の最後が特にきつい山だ。見下ろすとクワガタ池が真下になって、池の周囲にいる人がどんどん小さくなっていく。ぼくの後から最後の300mを同じ様に登ってくる後続の人が2人(モモアセの池で追い越した3人のうちの2人)見え、クモの糸のカンダタの様な気分…。ここで、朝先行していったペースの速かった3人組がロープを手繰りながら上から降りてきた。ぼくの顔を見ると「劔が見えませんでした」と残念そうだ。晴れてはいるものの、尾根の途中からも白馬連峰方面が雲で見えなかった様に、この毛勝山も山頂稜線部には雲がまとわりついている。山頂の眺めはあまり期待できなそうだ。でも、ゆっくりゆっくり、もの凄く急な東又谷源頭部を見下ろす急斜面に付けられた道は、草地の中をえぐられた滑りやすい泥の道だった。登り詰めた最後はミヤマハンノキの灌木の中を抜け、人の声がしている最後の高みになった。灌木を飛び出すと10時54分に毛勝山頂に着いた。この時、山頂には1,700m付近で抜かれた2人の若い男女(カップルでは無いようだ)と、人の良さそうな年配の方の合わせて3人の人が居た。毛勝山頂は意外に狭く、二等三角点標石と真ん中から割れている石仏、低い位置には木製の新調されたばかりといった感じの山頂名板があった。こげ茶に塗られた板には『毛勝山2415m』の白文字が鮮やかで、裏を見ると魚津市と書いてある。山頂の南側は傾斜した草原が広がっているが、本当に残念ながら、すぐそこまで霧の白い舌が延び、その先は白いスクリーンが降りている様に、正面にあるはずの劔をはじめとした北アルプス方面は全く見えなかった。この時見えていたのは、隣にあるずっと毛勝本峰と間違えていた南峰ぐらいだった。ここより標高が低いはずの南峰は、毛勝山頂から見ても少し高く見えるのは不思議。

 登山口から山頂まで5時間40分掛かった。下から湧き上ってくるガスでほぼ眺めはない。きつい山だったが、所詮は道のある山、ガイドのコースタイムでは登り7時間とあったが、ゆっくりペースでもこんなものだ、早い人なら5時間で登れるのでは、と思う。頂上の写真をちょっと撮って、山頂の南側に広がる草地に出る。そこは笹が混じる広々とした傾斜草原で、踏み跡が少し先まで延びていたが、ミヤマハンノキやハイマツの藪で終わっていた。誰もいないここでリンゴとパンを食べた。何時まで待っても目の前の霧の帳は晴れてこなかった。周囲の低木の木々は早くも赤や黄に紅葉していた。山頂の方で話をする人の声が多くなった。山頂に後続の人が2人到着した様だ。11時23分に山頂を降りる。ぼくが着いた時に山頂にいた3人はもう草付の急斜面を降りているのが見える。クワガタ池まで降りる途中で、行きに抜いたご夫婦と、その他3人の人とすれ違う。クワガタ池でちょっと休んだが、もう後から登ってくるような人も無いようだった。相変わらず晴天なのだが、周囲の山々は増々雲に隠れて見えなくなっている。12時2分にクワガタ池を後に、坦々と下っていく。下りは滑り易いので登りよりも一層神経を使う。モモアセ池で3人連れの1人が手持無沙汰な雰囲気で休んで居た。やはり調子が悪くてここで断念したのか、連れの2人が戻ってくるのを待っているようだった。

 草地にはミヤマリンドウとオヤマリンドウの2種類のリンドウが咲いている。その他にもイワオトギリやハクサンボウフウ、カライトソウなど、もう終わりに近い様子だが湿生の高山植物が沢山花を開いていた。草地から樹林帯に入ると、足元に気を遣いながらどんどん高度を下げて、2時2分に1,479.1m三角点に着く。うっかりすると足を滑らす道で下に降りるまでに3回転んだが、特にダメージもなかった。尾根沿いから最後は転げ落ちるような急斜面の急降下、少しずつ暑くなってきて3時50分に登山口に降りた。一日で1700mを上り下りするのは厳しいが、思った程には疲れなかった。しかし、明日ついでにもう一山登ろうかという予定は、ちょっと足に厳しい気がして断念した。脚の疲労もさることながら、ロープや木の枝にすがって降り続けたので、腕の筋肉痛が後でひどくなった。

 3時56分に車に戻った。毛勝山への案内は周辺のどこにもないし、標識類も一切無かった。片貝山荘から、通行止めになっていた阿部木谷林道分岐までの周辺には車が全部で10台くらい停まっていた。往復して帰った人の車の他に朝より少し増えているのは、明日登る人のものだろうか?ぼくが車を停めた直ぐ脇に『僧ヶ岳登山口』と岩に嵌め込まれた遭難碑がある。案内看板や「クマに注意」などの注意書きが幾つかあるが、ここから僧ヶ岳に登る人はほとんどいない様だった。ここには何の案内もないが車の主は全て毛勝登山の様だった。

 支度を済ませて、魚津市街に降りる。市街地の中にある(海のすぐ近く)下田温泉という看板が付いている銭湯に寄っていく。ここは魚料理も作っているれっきとした旅館であり(鱒すしと書いてあった)、しかし普通に銭湯でもあるという所。一階は全く普通に銭湯なのだった。中に入ると番台に乗ったおばさんがいて、入り口の自動販売機で出てきたプラ札をおばさんに渡すというもの。脱衣場の向うに内湯とその向こうにビルの谷間になった露天風呂がある。温泉とうたっているので、泉質には温泉成分があるのだろうが、やや塩素臭もして、無色透明でこれも普通に銭湯そのもの。料金は420円だった。結構汗をかいたのでさっぱりしたが、あまり温泉に浸った気分ではない。今日は次の山の登山口で車中泊して…という予定であったが、ラーメン屋で食事をして高速に乗りそのまま帰路に着いた。高速はずっと空いていた。群馬に入ってから事故で少し渋滞したが、夜10時には帰宅できた。


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2 コメント

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毛勝山の標高差1700mは凄いですね (ノラ)
2014-09-24 21:51:47
あさぎまだらさん こんばんは。毛勝山の標高差1700mは半端でないですね。越後3山の中の岳の十字峡との標高差よりあるようで想像するとちょっとうんざりします。それを11時間で往復するとなるとなかなか行こうという気にならないです。きつい登りが連続する山登りは上へ行ったっときに,景色が見えないと寂しいものがあります。北アルプスの展望が無かったのは残念でしたね。僧ゲ岳は再トライですか?先週私も北アルプスの北端に行きましたが紅葉は始まっているようです。そしてまだ秋の花も咲いていて不思議な光景でした。
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標高差 (あさぎまだら)
2014-09-25 02:02:08
ノラさんこんばんは。
1700mの標高差はアルプスでも結構登り手がある方ですね。でも意外にそんなにきつくは感じませんでした。荷が軽かったからでしょうね。7月の南アルプスの時の方がずっときつかったです。暑さに弱いのと、何といっても荷が重いからでしょうね。
僧ヶ岳は標高の割にきつい山です。越中駒ヶ岳まで行かなければ…現在、僧ヶ岳の楽ルート(宇奈月コース)は林道が不通になっていてダメの様です。なのでそこが開通してから駒ケ岳とセットで、それに猫又山や釜谷山も登りたい山になっていますね。
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