今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・塩沢山、前黒山

2013年05月23日 | 山登りの記録 2013

平成25年5月17日(金)
 塩沢山1,263.9m、前黒山1,678.3m

 GWの振替休日を利用して久々、平日に山に行くことにした。ところで、ぼくが最近登った山は、県内以外は長野・山梨が圧倒的に多く、隣県でも新潟・栃木の山に登る機会は意外に少ない。登れる山、登りたい山が無い訳ではないが、何となく栃木を通り越して福島まで行ってしまう事も多い。そう言えば、栃木では日光周辺を除けば案外有名山以外は登っていないのだった。手元にあった栃木100名山のガイドブックをパラパラめくっていたら、高原山塊の前黒山という山が気になった。ここは同じ高原山山系でも主峰を含む釈迦ヶ岳火山群とは分けられて、塩原火山群と言うらしい。釈迦ヶ岳の一群よりも古い火山とのことだ。前黒山の紹介には、道が無い山で「経験者向き」とある。ナントか名山巡りには興味も無いが、「道が無い」とか「経験者向き」という表現には食指が動く。しかし良く見るが、この場合の「経験者」というのは何を経験した者という意味なのだろうか?抽象的で良く分からない…「ベテラン向き」とか「塾達者向き」とかなら何となくそうかなあと分かるんだけど。

 前黒山は林道歩きが半分以上で、記録を見るとコースタイムはまちまちながら、1日の予定では時間が余ってしまう様だ。そこでもう一山、同じ栃木100名山から五十里ダム付近にある塩沢山を選んだ。直線距離では両山ともそれほど離れていないが、道路は迂回しているので登山口までは少し距離がある。会津に向かう時にいつも走っているR121の道端に塩沢山の登山口標識があるらしい、今まで何度となくここを通りながら一度も気づかなかった。木曜の夜に家を出る。今回は道があって確実に時間が読める塩沢山を先に登り、次に前黒山に登ることにして五十里湖へ向かった。

 R122で五十里湖から三依に向かう途中の道端にぽつんと『もくりん』という蕎麦屋がある。看板は何時も見ていた気がするが、その直ぐ手前に塩沢山の登山口があるとのこと。『もくりん』のお店をまず確認し、その手前にある小さな『塩沢山→』の標識を、ああこれか、という感じで見つけた。登山口の反対側20mくらい鬼怒川寄りに、ふれあい公園というのがあり、そこの駐車場に車を停めた。この公園の駐車場はもくりん寄りと鬼怒川寄りの2箇所にある。夜の11時、そのままシュラフに潜って眠った。

 翌朝、4時に一旦起きたが、薄明るい程度なのでまたシュラフに潜ってしまった。結局5時に起きて支度をし、5時半に駐車場を後に塩沢山登山口に入る。登山口付近の杉林を進み、少し沢沿いに登ってから水場を横切るとジグザグに登るようになった。素晴らしい快晴だが、今朝は少し冷え込み風も吹いて寒い。しばらく杉林を登ると2万5千図に991mの標高点がある尾根突端に出る。木の根が出た少し痩せた尾根を尚も登ると、向かいに松が並んだ尾根を見て、五十里湖を遠くに俯瞰するようになってくる。木々を透かして、南西には日光連山が、北西には県境の山並の上に真っ白な会津駒が見えている。どうもまた新雪が積もってあんなに白く見えているようだ。ツツドリや、つい昨日自宅で聞いたばかりの今年初めてのカッコウの声が新緑の森に響いている。右が落葉松の植林で、左側が雑木になった。

 6時33分に『遊雪の君』と薄れた文字の木札がぶら下がる小ピークに着く。ここから一旦少し下り、上り返すとブナが混じる明るい尾根道になった。笹が足元を隠し気味なトコロもあるが、概ね歩きやすい道が続く。先に頂上らしいピークが見えてくる。もう少し登ると更に先に見えたピークより更に高そうなピークが北に見えてきた。北側は太いブナが生える尾根道をしばらく進む。木々の間から遠くに女峰山と月山が見えている。頂上は結構遠いなあと思ったが、笹の被った急な登りで登りついた最初に見えていたピークが塩沢山の山頂だった。大きな木製の山名標識と三等三角点があった。地図で確認すると、塩沢山は南北にやや長めの頂稜で2つのピークを持つ様だ。というか、塩沢山からは三依山の方まで同じ様な高さの稜線が続いていると言う方が正確かな。その稜線の南の突端にある山が塩沢山らしい。先に見えているピークの方が地図で見ても少し高い。

 ガイドに書いてあるようには、眺めが良くないのは少しがっかり。周囲はナラなどの雑木に囲まれ、わずかに南側の高原山方面だけ眺めがある。真っ白な会津駒の山並みや、県境方面はスリット越しに確認できる程度で、日光山群も木々に見え隠れしている。登りの途中で見えた眺めの方がいくらかマシな様だ。快晴で、陽射しはたっぷりだが、冷たい風が吹いていて休んでいると寒く感じるのだった。山頂から見る北側は、笹の下生えと新緑が萌え始めた明るい雑木の樹林で好ましい眺めだった。この後に登る予定の前黒山が、直ぐ南に円く大きく、隣の明神岳にあるハンターマウンテンスキー場が正面に確認できた。

 8時2分に塩沢山を降り、往路をたんたんと戻る。夏の様な日差しになるが、今のところは風がまだ冷たいので暑い感じではない。9時15分にふれあい公園駐車場に戻ってくる。平日なので『もくりん』は営業していない。公園の駐車場にも他に車は無く、広々した公園には人影も無かった。

 車に乗り、三依の先から尾頭トンネルを潜って塩原に下る。日塩道路を上って、帰りに入浴する予定の新湯温泉を過ぎ、有料ゲートから1km程上った左に前黒治山林の看板を見つけた。ここが前黒山へのルート入口だ。未舗装の林道を100mくらい入って、二股になった所に車を停める。10時2分に出発して林道を奥に進む。この林道は分岐が多くて分かりにくいが、概ね右、右と進む。途中、作業小屋の残骸やシカ避けのフェンスが張り巡らされたところがあった。軽4駆に乗った老夫婦が行ったりきたり何度かすれ違ったが、山菜採りにでも来た様な感じだ。

 雑木の新緑の中を進む。風もなくなり、朝よりは大分暑くなってきた。長い林道歩きで汗をかくようになる。シジュウカラやヤマガラが盛んにテリトリー宣言をしている。遠くではツツドリやカッコウの声も聞こえる。道端にハルリンドウが咲いていたのを口実に、ちょっとここで休んで写真を撮りながらせんべいなど摘む。

 尚も林道を歩いていくと、行く手に丸い山が見えてきたのでこれが前黒山かな?と思ったが、後で確認したところ、これは明神岳と前黒山の間にある1,527mのピークらしかった。林道の途中から少し眺めがあって、男鹿山塊の山々が直ぐそこに見え、日留賀岳や鹿又岳が大きい。塩那道路も確認できた。林道脇に岩頭があり、そこまで行くと日光山群から男鹿山塊までの大展望が広がった。今日はここが一番眺めの良い場所だった。道は次第に笹に埋まって細くなり、車は随分前に通れなくなっている様な状態になってきた。崩壊して落ちた木橋を過ぎ、じぐざぐ道になったのでそろそろ登り口を見つけるために慎重に進む。

 ここであらためて地図とGPSで確認したところ、もう直ぐ上が前黒山であるようだ。間もなく道の脇に赤テープと上に向かっている踏み跡を見つけた。ネットの記録を幾つか見た感じでは、尾根を直上するものや、ガレた枯れ沢を詰めていくもの等、幾つかのルートがある様だが、今ここに見られるものは尾根を直登するものの様で、急傾斜ながら上りのルートでは一番登り易いという書き込みがあった。取り合えずこれを辿ってみることにする。

 赤テープの踏み跡を登って行くと、シカ道でもあるらしくシカの糞が点々と見られる。笹にブナ等の広葉樹林の中をしばらく登ると、笹が深くなって踏み跡が薄くなった。テープも見当たらなくなる。歩きやすいところを選びながら上に向かう。少し登ると左手から違う踏み跡が上って来ており、こちらは幾種類ものテープが頻繁に付いていた。今度はこれを辿っていくと尾根は笹原になり、右手は木々も無く眺めがある場所に出た。

 東に釈迦ヶ岳を奥にして手前に明神岳がありスキー場や有料道路も見える。行く手にはまだ高い黒木の山が見えてきたので、これが前黒山の様だ。まだかなり登るようだな…。しかし、そこからはわずかに登ると踏み跡は左に折れ、木々が疎らなカヤトになり、南に那須野原の平地が広がった。すぐそこには前黒山と肩を並べる無名峰(1,700m)が大きく見える。東は釈迦ヶ岳と鶏頂山、剣ヶ峰など高原山の主要山群が並んでいた。そのまま、黄色く枯れて踏み跡を隠し気味になった膝丈の笹を分け、笹が刈られた山頂に12時54分に着いた。山頂から南側は良く見えるが、他の方角はダケカンバ等の木々に邪魔をされて展望は良くない。釈迦ヶ岳等も山頂手前のカヤトからは良く見えたが、山頂からは木に隠れ気味だ。三等三角点標石と中央にポールが立ち、栃木の山紀行さんのものと、栃木百名山36座の2つのプレートが、そこに斜めにぶら下がっていた。陽射しは強く朝方の寒い風も止んで暖かい。1,700m峰と剣ヶ峰の間には那須野原が見えているが、西那須野辺りの市街地の向こうは霞んで良く見えない。

 早速湯を沸かし、カップ蕎麦とパンを食べる。平日でもあり、栃木100名山の一峰としても他に人が登って来ることも無いだろう。しばらくは静かな山頂を満喫した。1,700m峰はここより高くて、多分平地からは前黒山よりも目立つだろうに、名前が無いのだろうか?1時46分に重い腰を上げ前黒山を後にする。下りは尾根の稜の右手(登りでは左手)のテープ類の多い踏み跡を下ってみた。こちらもしばらく下るとテープが無くなり、踏み跡も薄くなる。薄い踏み跡は笹の斜面を離れ、沢の詰状のところからは石ゴロの歩きにくい下りになって、そのまま降りると大岩がごろごろした枯れた沢になる。何となく見た様な景色だなと思ったら、目の前に壊れた橋が現れた。林道がジグザグ登りになる手前で渡った壊れた木橋の残骸の所に降りた。距離的には少し短縮したかも知れないが、登りに取った踏み跡の方が上り下りとも楽な気がした。

 陽が長いこの時期だ。午後にもなると、長い林道歩きは強い陽射しに少し気だるい気分になってくる。そういえば、この所雨がほとんど降っていない。道も山も何となく乾いて埃っぽい。幾つかの分岐を合わせて、シカ避けのフェンス辺りからは林道も幅が広くなり、新しい砂利が敷かれたばかりで歩きづらい。周囲の新緑は目も洗われるばかりだが、顔に西日が当たって暑い。3時26分に車を停めた最初の分岐まで戻ってきた。前黒山はこんな訳で、ほぼ林道歩きの山だった。

 支度を済ませ、日塩道路を下る。ゲートからほんの少ししか入らなかったのに600円の通行料金を取られたのは残念な事だ。前黒林道入口までは1kmもないから、料金所の付近に車を停めてそこから歩けば無料だろう。

 有料道路を下って、新湯温泉の『湯荘白樺』という温泉旅館で入浴する。ここは直ぐ後ろに噴煙が出ている硫黄山の源泉があり、共同浴場の『寺の湯』の隣だ。直ぐ下には良く知られた『むじなの湯』もある。源泉かけ流しの木造りの狭い浴場だけで露天風呂はない。最初は貸切だったが後から1人、でも直ぐに居なくなった。熱めの湯で硫黄の臭いがぷんぷんする。木の浴槽で疲れた手足を伸ばすと最高の気分だ。2山登って人にも会わず、源泉かけ流しの温泉に浸かって気分は最高だった。入浴後は塩原を後に家路に着いた。


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2 コメント

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塩沢山の名板は新しいですね (ノラ)
2013-05-23 21:33:34
あさぎまだらさん こんばんは。 塩沢山の木の山名板は私が最後に行った2010年にはかかっていなかったですからその後ついたのでしょう。
前黒山は2004年当時は赤テープも無くかなり薮が深かったのですが,栃木100名山に選定されて登る人が増えて,踏み跡もついたのですね。壊れた橋から登るルートなんて当時は無かったです。林道の一番奥のどん詰まりから登って,多分あさぎまだらさんが登ったルートで降ったような。
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名山うんざり (あさぎまだら)
2013-05-24 02:59:25
ノラさんこんばんは。
塩沢山には反対側にもっと大きな標識があります。
前黒山も林道が長くて、テープ類もうるさいぐらいです。
誰でも登れる山になっていますね。もっとも、前黒山を案内する標識はありませんでした。名山に選定されると変わります。ナントカ名山はいいかげん止めて欲しいですね。山にそんな冠は要りません。札所巡りみたいな流行は何時まで続くのでしょう。
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