Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

環境の変化

2008-10-14 12:31:59 | 自然から学ぶ


 先週、伊那市富県の小学校の近くを流れている幹線用水路沿いの石垣に見事に咲くツメレンゲの花を見た(写真右)。ツメレンゲについては花の季節以外にも何度か触れてきているが、ちょうど今は花の季節ということで、記憶にあるツメレンゲの咲く場所をいくつか訪れてみた。この富県のものは石垣の所有者が大鹿村から採ってきて植えたものと言うから完全なる自生ではない。そして本人にしてみればツメレンゲを目当てに採ったわけではなく、庭に並べられたイワヒバを見れば解るとおり、そこにたまたま付いていたということのようで、あまりにあちこちに広がったため、雑草をむしるように取り除いたという。だからツメレンゲという花と意識していたかどうかも定かではない。そのお宅の庭のあちこちにツメレンゲの株が飛び散っている姿を見ると、かなりのイワヒバマニアのようだ。その飛び散ったツメレンゲが、自宅の外側に積まれた石積みにも広がり、見事な花を見せるのだから花の強さは予想以上なのかもしれない。写真の株はそんな石垣に咲くツメレンゲの中でも最も見事なもので、なかなかの肥満気味姿である。これほど勢いのある株はなかなか見たことがない。勢いのある花が成長するだけ環境が恵まれているということなのだろう。石垣だけに止まらず、その下を流れているコンクリート水路の肩にも株が見え始めているし、以前にも触れたように、石垣から少し離れたところの水路肩にも見事な株が成長していた。コンクリートの面に、少しでも土がこびりついていれば、そこに根を付けるほどで、なかなかのつわものである。

 さて、毎年訪れているツメレンゲの群生している場所にも足を運んでみた。中川村渡場の県道沿いの石垣であるが、ここを初めて知った時と、現在ではだいぶ様子が変わってきた。初めて知ったのはもう5年ほど前のことである。当時はツメレンゲの咲く石垣は白く玉石の姿を瓦のように見せていたが、今は土がだいぶ覆い被さって玉石の姿がよく見えない。土が覆い被さると当然のごとく草が生えだし、まるで土手のように雑草が繁茂し始めた。一瞬「ツメレンゲはどこにいった」と危惧するほどで、少し北側の草の少ない方に行くと、たくさんのツメレンゲが咲いている(写真左)。しかしである。このままあと何年かすると、きっと生育環境は低下していくことだろう。土が覆い被さることで雑草に駆逐される。土のために乾燥した石積の面が湿ってきてツメレンゲの好きな環境ではなくなる。といった具合に明らかに環境が変わってきており、いずれは姿を消してしまうかもしれない。もともと河川護岸に生え出したもので、人工的に造られた生育環境である。さらにわたしの推測では、たまたまこの場所県道がカーブしていて、例えばダンプ街道といわれるだけにそうしたダンプから土がこぼれ落ちて、その中にまぎれていたツメレンゲが自生を始めたのではないかと思っている。だからこそ数年で土が覆い被さってくるというのもうなづけるわけだ。もちろん昔と違って現在のダンプはシート掛けがしっかりされていて(実は自動で掛けられるこの装置、「完全」とは言い難いのかもしれない)、簡単にこぼれるということはないのだが、それでも覆い被さるほど土がどこからかやってくるのだから、そうした要因しか考えられない。そしてこれも予想できることであるが、道路のカーブ区間というものはゴミもよく投げ捨てられる。ここもその通りゴミがたくさん散乱している。「希少植物が自生していますから、ゴミを捨てないように」などという看板を立てるわけにもゆかない。捨てる人たちもそんな花が咲いているなどということは誰も知らないだろう。年々環境が変わりつつある姿を見ていると、毎年観察にきている自分が、少し手入れをしてあげるというものなのだろうか、などと思うが、いまだ手をかけられないでいる。

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