Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

死の針山

2007-10-18 12:21:11 | 自然から学ぶ
 三峰川河川公園に行った。現場に出て、弁当を食べる空間を探しながらたどり着いた。外出していると、昼をとる場所というものも重要なポイントとなる。どれだけそれを重要と捉えるかも人それぞれだろうが、その場に居合わせる仕事仲間の人数によっても異なってくる。若いころは弁当などは持ち歩かなかったから、必ず外食となった。この外食する場所をどこにするかもポイントになるのたが、このことはまた別の機会に記録するとして、ここでは弁当持ちの場合を考えてみる。

 先日数人で出かけた佐久での現場。仕事が間に合わなかったということもあるが、弁当を持っていなかった者もすぐそばにあったコンビにで購入し、国道ばたの歩道で食べることになった。1ヶ月ほど前も、やはり数人ででかけた現場で、外食すべく食堂を探したが定休日の店が多かったため、仕方なくスーパーで購入してその店の前に置かれていたベンチで食べたこともあった。今時は歩いてものを食べる人も多いから、とくだん気にすることもないのたが、食べることだけを意識すればそれでもよいのだが、一応「昼休み」という休息時間なのだから、もう少し落ち着いて食べたいと思うのはわたしばかりではないはずだ。大型車が横を猛スピードで走り続けている空間や、買い物客が頻繁に通る空間で食べることほど落ち着かないことはない。これが立って、あるいは歩きながら食べていれば人にはそれほど意識されないが、ほかの人は動いている、わちしは座って食べているという行動の明らかな違いが、その場に違和感を与えるのだ。

 ということで、1人で現場を訪れる際は、必ず落ち着いた場所を探す。人がいないからといって山の中ならどこでもよいというものでもない。見晴らしが良ければそれにこしたこともないし、座る場所がある休憩所で人影がないようなところならそれ以上の場所はない。長年そうした選択をしていると、だいたい傾向が出てくる。とりあえず、公園・神社・寺なんていう場所が多くなる。

 さて、三峰河川公園は伊那市東春近の三峰川左岸にある。平日ではあるが、そこそこの人がいる。昼の時間ということもあって、わたしたちと同じ目的でやってくる人たちも多い。河川堤防をウォーキングしている年配の方たちも多い。食事後、少し周りを歩いてみる。公園にされているから植生は単一化している。河川内は比較的手が入れられているせいか、柳の立ち木が残り、ニセアカシアは排除されている。それでも繁殖力が強いから、稚木がたくさん控えている。盛んにアレチウリの駆除作業が話題になる三峰川だけに、河川公園の周囲にはその姿が見えない。そんな河川内に今、盛んに咲いていているのがセンダングサである。いわゆる「ひっつき草」である。子どものころの印象では、田んぼの土手に盛んにアメリカセンダングサがあったことを記憶するが、そのアメリカセンダングサもあるが、ここにはセンダングサが多い。歩きながらも、単一化した植生で、センダングサの周りを盛んにキチョウやモンシロチョウが飛んでいるくらいで変化はなく、面白みはなかったのだが、そのうちに気がついたことがあった。このセンダングサにトンボがたくさんとまっているのだ。実はとまっているのではない。捕捉されて動けなくなり、そのまま死んでいるものや、まだ翅をバタバタしているものなのだ。チョウに比較すると周辺に体色が同調しているため、目立ちはしないのだが、よくみると、捕捉されたトンボがたくさんいるのだ。トンボの種もさまざまで、トンボを観察するにはよいシチュエーションといえるだろう。



 センダングサの黄色い花もまだ咲いてはいるのだが、花の終わったものは、すでに棘のある枯れた草となっている。アメリカセンダングサに比較すると、花の大きさは小さいくらいなのに、枯れたあとの姿は大きく、線香花火が開いたごとくみごとな姿を見せる。この大きな針山にとまったトンボは、そのまま飛びたてなくなるのだ。バタバタしているトンボをそこから放してやると、トンボの体にその棘がくっついてくるほどだ。トンボたちにとっては死の針山である。変化のないどうという空間ではなかったのだが、この針山に気がついてから、きっとわたしの目の色は変わったに違いない。変化のない空間でヒントを得ると、楽しいものだ。持ち帰りの仕事に集中して1時すぎまで作業をしていて寝不足だったが、昼寝をするか、散策をするか、結果はいかに・・・というところだった。



 写真はそんな捕捉されたトンボと、見事なセンダングサの針山を捉えたものだ。針山の向こうに映る山は、伊那市のシンボル的山のひとつ、経ヶ岳である。

 撮影 2007.10.15

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