Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

移住した人々②

2011-08-19 12:26:33 | ひとから学ぶ

移住した人々①より

 先ごろ記した「昭和56年台風15号災害」の須坂市仁礼での死者数は10名。未曾有の被害をもたらし、伊那谷における災害史上最大と言われた昭和36年梅雨前線豪雨災害における中川村での死者数は18名である。エリアという面で捉えると、仁礼の災害はこの伊那谷における災害史上最大と言われた災害をも上回るものであったとしても過言ではないだろう。そもそも死者数は過去に比較して災害規模をあてはめても比例するものではなく、減少しているのは既知のこと。現代科学の進歩と、生活者重視のサポートを構築してきた結果である。確かに人間は自然を完璧に治めることはできないが、開発という人間の仕業によって起きると言われる自然の猛威を、ある程度カバーしてきたのも事実。「想定外」とは起きた規模に対してのもので、起きることをまったく想定していなかったわけでもない。有史以来のデータが今と同じように蓄積されていたら、より精度の高い予測もできるのだろう。せいぜい1世紀ほどのデータをもとにわたしたちは総てを予測しようとしても、地球の歴史から捉えれば偏重止むを得ないのである。

 仁礼の災害でも宇原川沿いにあって死者を出した家々は移転して今はない。川沿いに住むということはいかにリスクを負うことか、それは難しい理解ではない。とくに山間の狭隘な地にとっては、川と山に挟まれて、そもそもが住むにはスペースが限られていることは言うまでもない。それでも人々はそこに住み着いた。水がなくては人は生きることができない。第1条件だ。その条件を汲めば、自ずと川沿いの湧水が豊富な場所に住みかを求めるのは自然なこと。災害と生きるということはとても近似した空間に狭められるわけだ。もちろん現代ではその条件は高くなくとも生きることはできるわけで、それでもわざわざ川端に家を建てる意図は何か、問わざるを得ない。事実宇原で話を聞いた方も、あの災害を忘れたように川端に建てる人々がいて頭を傾げていた。家を建てることに対してのさまざまな情報とか、また意識に対しての経験があまり重要視されていない時代になったとも言えるのかもしれない。被災を受けた後に「なぜこんなところを造成したのか」と提供した側に問い詰める光景はよくあるが、自らの選択の責任はそこから消えている。

 昭和36年の梅雨前線豪雨で被害を被ったのは主に川沿いの地域であった。もちろん山間の川と山を挟んだ地域もそんな川沿いの地域として被害を被った。伊藤修氏が「三六災害から五十年の歳月を経て(1)-中川村滝沢・桑原・四徳-」(『伊那路』654号)で扱っている滝沢も桑原も、そして四徳もそんな地域である。中川村そのものがそうした典型的な集落が多かった。そして滝沢も四徳も今は集落がない。全戸移住という選択をとったのである(滝沢は小渋ダム建設に伴う水没地として結果的に全戸移住となった)。大鹿村桶谷のことは以前から認識していたが、滝沢川の対岸にあったという滝沢の集落はわたしも認識していなかった。伊藤氏も「川を挟んだ対岸にも家が点在するがこちらは、行政上は下伊那郡大鹿村桶谷に属する。狭い谷の小さな川を挟んだ対岸は郡外である。なんとも不思議な感じがする」と感想を漏らしているように、滝沢は中川村の中心から遙か離れている。その遙か離れている集落の最も縁近い人たちが大鹿村の人たちだったというところに確かに不思議な空間意識が生じる。伊藤氏の記述に興味深い点がいくつか記されている。「滝沢川も年々荒れるようになってきた」という小沢正司さんの言葉から解ることは、山の状況が影響していたということだろう。「荒れる」ような環境になってきていたのだろう。また川の濁流を逃れようとして非難する光景を「藁を入れる小屋へ逃げたがそこも危なくなったので桑株につかまり、つかまり、やっとのおもいで炭小屋まへ避難した」と同じ小沢さんの体験を書きとめている。自宅が最も川沿いにあって、藁を入れる小屋、そして炭小屋という順に山肌の上下に構成されていたのだろう。また「妹は大河原の学校に通っていた」というように大鹿村の学校に通っていたことが解る。

 当時のそれぞれの家々を図に示し、経験を聞き取りして記した伊藤氏の報告はとても興味深いのである。

 続く


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1 コメント

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エマニュエル・トッド講演会 9/12(月) (山間僻地)
2011-08-20 09:00:59
おはようございます。ヘキチです。
研究資料としてこんなのがあります。

2011年9月12日(月)特別講演 エマニュエル・トッド 10:00~12:00
https://www.gcoe-intimacy.jp/article.php/20110812122507932_ja

エマニュエル・トッド
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%89#.E3.80.8E.E7.A7.BB.E6.B0.91.E3.81.AE.E9.81.8B.E5.91.BD.E3.80.8F

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