Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

稲作のこの後

2019-06-18 23:00:30 | 農村環境

 先ごろ親戚を訪れた際、大きなハウスの中がガラントとしていたので、何を作っているのかおじさんに聞いた。すると、それまでは稲の苗を作っていたと言う。そこでわが家の稲の苗の話になったのだが、毎年わが家の苗は農協に頼んだものを利用しているが、貧弱で見るからに良い苗とは言いがたい。すると、このあたりでは農業法人の育てた苗を利用する人が多いが、そうしたところの苗はおしなべて「へぼい苗だ」と言う。手が掛けられないから、当然、苗は個人で作った苗に比較すれば良いはずがない。農協の方がまだ良いかもしれないが、同じようなもののよう。

 おじさんの家の近くの農業法人では、地域の中だけではなく、地域外の水田も頼まれて耕作しているようで、広範になれば手間も掛かる。もともと作業受託の盛んな地域だったので、いまもってある作業だけ担うケースが多く、おじさんのところも収穫時のコンバインでの刈り取りは農業法人だという。1町歩以上稲作をしていて作業委託しているというのだから、個人で稲作をしているほとんどの人が刈り取りは法人への委託なのだろう。いわゆる担い手扱いにされるような農家の中には、20町歩以上引き受けて耕作しているひともいるが、手がないからほとんど手を入れない農家もあるという。「稗がたくさん生えていたら…」とおじさんの家の前に並ぶ水田を「見てこなかった!?」、とおじさんは訪れたわたしに聞く。まだ植えてそう間もない状態では、わたしの目には稗とは解らず、おじさんの言葉に頷くことはできなかったが、その水田を耕作されている担い手の方は、大型機械を何台も持っているが、機械に乗っているだけで、細かい手は加えないようだ。したがって反当2、3俵くらいしか収穫できないのではないか、そうおじさんは言う。帰る際におじさんに言われた水田を見てみると、植えてそう間もないのに、確かに苗間に同じくらいに成長した草が生えている。稲なのか稗なのかははっきりしない。しかし、よく見ると稲も不揃いで、よその水田の田植え後の光景とはちょっと違う。「なるほど」と思ったわけだ。

 伊那市周辺のある地域では、1反区画程度の、今なら「小さい」と言えるような水田を500枚耕作されている担い手があるという。他にも200枚くらい耕作している人もいるというが、簡単に言えば前者は約50ヘクタール、後者は約20ヘクタール耕作していることになる。晩秋になっても稲刈りされていない水田があったので、「ありゃぁ、何で刈ってないんだ」と聞いた人がいる。すると「刈り忘れた」と言ったらしい。500枚も、それも点々と耕作しているので、忘れてしまうのも無理はない。こうした担い手たちにとって、個人で耕作するにも限度があるだろう。そしてもちろん個人が耕作するより手は入らない。そうした水田の畦は草が刈られていなかったり、除草剤が効かずに田の草が多い水田も多い。もちろんそうしたことを防ぐために除草剤代金も嵩む。

 おじさんの周囲では、畦草刈りを受託する団体(会社か)もあるが、そうした作業をしている人に「日当はいくらか」、と聞いたところ、5000円程度のところもあるという。「そんなに安いのか」と思うが、それほどでないと、大きな土手が多い地域ではやっていけないのかもしれないが、逆に受託してくれるところは、いずれなくなるかもしれない。そんな話を聞いていて、いずれコメの反当収量は下がっていくのだろう、そう思った。


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