Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

台地の新興住宅地

2007-04-07 12:53:58 | 自然から学ぶ


 流れる谷は、天竜川の谷である。上伊那郡中川村の中心あたりの流れである。向こうに見えている橋は、かつての別のムラ、片桐と大草を結ぶことになった橋である。その左手に中学校や図書館、公民館などの公共施設が並ぶ。そしてその手前、少し下がったところにたくさんの住宅地が展開している。牧ケ原という台地上の突端にあるこの場所は南原という地名である。かつてここはすべて水田地帯で、住宅は皆無だった。実はわたしもこの土地に宅地を探したこともあったわけで、もしかしたらこの地に住む人になっていたのかもしれないと思うと、人事とは思えないわけだ。ご覧の通り、天竜川の谷からいっきに段丘崖を登ったところが宅地になっているわけで、崩れはしないかと心配にもなる。川の端には岩場が見えたりするから、そこそこ安定した状態で姿を変えずにきていることは予想つく。ただ、この台地の真ん中ほどには、国道153号線のトンネルが掘られていて、近年、そのトンネルに併設した形で歩道用トンネルが掘られた。その際の工事でも明らかになったのだが、岩は現れず礫層だったという。この先で天竜川はこの台地を避けるように下流に向かって左に曲がる。そしてこの橋の下を流れてくるわけだが、この狭隘な谷を釜淵峡といっている。

 かつて住宅地のある場所は水田地帯だったわけだが、わたしがこの地の物件を探していたころは、まだ半分くらいは水田だった。ところが、今ではその水田地帯がまったく消えてしまい、ほとんどが宅地化されている。ムラ内の山間地から移住した人も多いという。実はこの住宅地と中学がある平らには段丘がある。そして、この台地をさらに西に進んだところにやはり小さな段丘があり、その下あたりを国道153号線のトンネルが通過している。この段丘は断層段丘といわれているもので、活断層による地震の危険度も高い断層帯のひとつである。

 さて、みごとな釜淵峡の谷であるが、この風景を認識している人は少ない。ちなみにこの写真は、中川村三共の石神の松のある場所から天竜川をのぞいたものである。人によっては、川にいっきに斜面が向かっているから、「いつか崩れるぞ」なんていうことを口にする人もいる。そんな言葉を思い出しながら、対岸からこの住宅地を望むと、「いつか崩れるぞ」という言葉も現実味を帯びてくる。

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