Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「犬神」

2021-02-11 23:02:50 | 地域から学ぶ

令和3年2月9日撮影

 

 仕事で飯島町七久保を歩いていたら、「犬神」を見つけた。それも馬頭観音など混じって2体同じところに。銘文はただ「犬神」とあるだけで、ほかにはない。風化状況からみて、それほど新しいものではなく、また江戸時代に遡るほど古くもない。現代なら、飼い犬の供養のために、という建立はあるかもしれないが、馬頭観音などと並んでいるところから、飼い犬供養というふうでもない。

 「犬神」について『日本石仏辞典』や『日本石仏図典』に頼ってみた。しかし、前者には「犬塚」の記述はあるが、石仏としての「犬神」については皆無だ。また後者であるが、「犬」の項があるが、そこには「昔から犬は、狩猟に、番犬に、ペットなどとして、人間生活にきわめて密着した存在であったのにもかかわらず、単独の石造物としては意外に少ない」とあり、「ほとんどが神社社頭の狛犬に代表されている感がある」と述べていて、以降は狛犬にかかわる記述になってしまっている。ようは犬神の事例が少ないが故の、扱いの低さといえる。

 『飯島町の石造文化財』(2006年 飯島町教育委員会)には、「動物供養塔」として関係石造物が紹介されているが、「犬神」を取り上げて「飼い犬の供養ばかりでなく、猪や鹿による農地の食害を防ぐ神かもしれない」と記している。ようはかつての獣害対策に役立った「犬」を指しているのだろう。今までわたしは、「犬神」なるものを見たことがなかった。ごく単純な刻銘の石造物ではあるが、とても気になる石造物である。


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