Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

伊那田島―伊那市駅

2012-01-08 23:55:05 | つぶやき

 休日に時おり利用している伊那田島駅から電車に乗る。今日は窓から外の眺めを望みながら伊那まで走る。

 平日の日中の車内など閑散としたものなのだろうが、休日であっても人影は少ない。1車両に数人、地元の者とは明らかに異なった風体の人たちが乗っている。鉄道を楽しむ人たちにはいろいろな人たちがいるのだろうが、そんな風体の人たちは、だいたいが鉄道に乗ることを楽しみにしているタイプといえる。いわゆる写真を撮る人たちとは異なる。この日も5人ほどの乗客の中に、空いているボックス席を渡り歩いて外の景色をスナップ写真に納めている人がいた。平日にはあまり見ない景色である。

 伊那田島あたりから中央アルプスの冠雪した山々がしっかりと見え始める。南駒ケ岳である。いっぽう東を望むと、南アルプスの塩見岳から荒川岳や赤石岳がしっかりと望める。そして手前には深い天竜川の谷が落ち込んでいて、鉄道がそこそこ高いところを走っていることを印象付ける。ここから伊那市駅までのほぼ1時間が始まる。周辺の線路際には枯れ果てたススキがしばらくは目立つが、発車してすぐにGOKOトマトむらの看板とともにクリスタルな建物群が見えてくる。トマトの栽培工場である。大沢信号所を過ぎると相ノ沢川を渡り飯島町に入る。この相ノ沢川の鉄橋下に堰堤があって、その堰堤下に円筒形の魚道が設けられている。ちょっと珍しい魚道だ。間もなく高遠原駅。いよいよ伊那谷中部では最も標高の高い七久保駅に到達するが、もっとも中央アルプスの山々が美しく映えるあたりだ。七久保駅を発車すると、休日の午前中には飯田線の電車を撮影するためのカメラマンが居並ぶ水田地帯を経て伊那本郷駅に着く。ここからしばらくは時おり南アルプスの山々が望めるが、手前にある伊那山地の陣馬形山がそれらの山々を隠すことになる。伊那本郷駅の西側斜面には網状に梨の木の枝が映える。

 いよいよここから田切地形独特のΩカーブと言われる線形に突入していく。谷の向こう側に平行するように飯田線が見える。カーブがきついこともあって、このΩカーブを超えるのに時間を要す。時間とは別にもうひとつ欠点がここにある。田切地形で削り取られた段丘が急斜面のため、段丘を下っていく斜面は豪雨のたびに崩落危険箇所となる。県境域と同様に豪雨ともなると不通になりかねないのである。飯島駅を過ぎると中央アルプスの宝剣岳がしっかりと見えるようになる。そして次の駅はまさに地形を現わす駅名「田切」である。ここから次の伊那福岡間もΩカーブを示す。この日も中田切川鉄橋手前の水田地帯でカメラを構える人の姿が見えた。脇には自家用車らしき車が止まっている。こうしたカメラマンのほとんどが今は車でやってくる。かつては電車でやってくる人の姿も見たが、この時代はそのような悠長なことをしているマニアはいなくなった。

 伊那福岡から伊那市駅まではさほど路線が曲がることなく進む。伊那田島から伊那福岡までが30分かかったとすると(230円区間)、ここから伊那市駅はもう30分もかからない(320円区間)。伊那福岡駅まで来ると、それまでは南駒ヶ岳の山々の印象が強かったが、明確に視線は宝剣岳に注がれるようになる。いっぽう陣馬形山は依然として前山として背後の南アルプスを隠すものの、仙丈ケ岳の姿が一段と目に留まるようになる。伊那福岡から小町屋まではそれまでののろのろとした走りとは打って変わって高速走行になる。駒ヶ根駅前には出初式で集まった消防団の法被が珍しく駅前を賑わせていた。大田切駅は、今は位置が変わってしまったかつての田切駅の姿を思い出させるようなカーブ上にある駅。お年寄りにはちょっと昇降に戸惑うようなホームと電車との隙間である。

 この日は伊那谷のあちこちで正月の火祭り、いわゆるどんど焼きが行われたのだろう。宮田駅にほど近い町の中でも、焼け焦げた炭を手当てしている人の姿が見えた。赤木駅を過ぎると路線は天竜川端の沖積地へぐっと下っていく。いわゆるJR最急勾配区間と言われる沢渡駅南側の路線を最後尾から眺めると、確かに急であることが確認できる。伊那市駅に午後13:03分着。ワンマン列車のため、最後尾のドアから降りると、改札を出るまではしばらく時間を要す。なぜならば休日ということもあって、改札で清算する降車客がほとんどなのである。

伊那本郷駅南

 

伊那本郷駅

 

伊那市駅

 

七久保―伊那本郷駅間

 

飯島駅

 

 


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