Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

高速道路がタダになったら

2008-09-30 12:36:21 | ひとから学ぶ
 民主党の公約の中に「高速道路無料化」というものがある。けっこう目立つ公約なので国民受けすることは間違いない。ただし、農家への所得補償も含め、これらは車をめったに使わない都会人たちにとってみればあまり有効ではない。

 このことについて民主党の2007年マニフェストには次のように書かれている。

「高速道路は、一部大都市を除いて無料とします。多額の投資をしながら有効活用されていない高速道路を生かすことで、地方を活性化するとともに、流通コストの削減を図ります。不透明な道路特別会計や官製談合などの実態を精査し、総合的な交通体系のあり方も勘案しながら、環境面にも配慮しつつ、具体的な無料化計画を策定します。無料化によってコストを削減するだけでなく、出入口を増設できることから、地方の高速道路が暮らしに生かせる道路としてよみがえります。また雇用の拡大、通勤圏の拡大、農産物、畜産物、水産物の消費地への流通コスト、時間コスト削減は、農林漁業など生産者の基盤強化にもつながります。民主党は、この政策を実現するために、高速道路原則無料化の基本方針と無料化に向けた道筋を示す「高速道路事業改革基本法案」を提出しました。国道管理業務・高速道路を中心とする道路維持管理のために設立する複数の法人等での受け入れで雇用確保に万全を期します。」

 流通コストの削減はどんなメリットがあるかといえば、農産物に限らず製品の運送費が削減されてコストダウンにつながるというものである。ここで考えなくてはならないのは、必ずしも流通に関わっている人たちにはメリットがないということになる。さらには出入り口を増やすことにより生活に密着した道路に再生しようとしている。果たして高速道路が無料になって本当によいのだろうか、と考える。

 例えばの話である。わたしが京都へ旅行するとしよう。午前5時47分発飯田線に乗車、豊橋に着くのは午前9時54分。こだまに乗って京都に着くのは午前11時28分である。所要時間5時間41分、総額10060円の片道の行程である。車だとどうだろう。約260キロ高速代金は6050円、燃料はリッター12キロ走るとして高速道路のスタンド標準価格175円で計算すると3792円となる。総額9842円で、一人で行ったとしても車が安い。そしてもちろんのこと所要時間は3時間くらいで半分である。ここから高速代金を除くとたった3792円となる。公共交通など相手にならない。ETC割引が進んできて、ただでさえ割引料金を利用すると3650円となる。最近電車を利用するようになって、「たまには電車で旅行でもしよう」とした際、少しくらい高いのは宿賃をいくらに設定するかというものに等しく、そこに少し違う贅沢をするかしないかという選択になる。ところが高速道路料金が不要となれば、一人旅だとしても車を利用したくなるのは普通である。こんなたまの旅行でもそういう選択になるのだから、日常ビジネスで利用する人たちはこぞって車に乗り換えることになるだろう。とすれば高速道路の混雑は目に見えている。もちろん事故が多くなり、危険な空間と化すことは必然である。前述したように国民にとって平等な還元を考えれば、必ずしも無料化が必要とはいえない。もちろん日本の社会構造が安定(食糧自給率が上がる施策が明確になる、とか公共交通機関の利用率が地方でも上がる施策が明確になるなど)した上での無料化なら解るが、現段階の無料化は、ますます地方の進むべき道を危うくすることは間違いない。選挙戦略としてそんな看板あげるというのなら“だまし”としか見られない。

 何より地方の人々がますます公共交通機関を利用しなくなれば、車しか足がなくなるということになる。そんな社会が最良だと民主党は思っているのだろうか。まずもって戦略的な発言としか言いようがないだろう。
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