Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

農業経営類型に見る所得

2008-04-02 12:20:59 | 農村環境


 平成19年12月25日に公表された農業経営統計調査のうち平成18年個別経営の営農類型別経営統計のデータが『農林統計ながの』の2月号に掲載されていた。野菜経営の路地と施設別、果樹経営、そして花卉経営の路地と施設別という5種類の経営類型に対しての農業所得の平均値が示されている。そのデータから少しコメントしてみたいと思う。掲載されたデータをわたしなりに編集したものが表である。このデータは全国平均値であるが、例えば果樹の全国平均値と長野県の平均値とを比較しても、それほど大差がないことから、全国平均値でもわたしの周辺の農業経営事情を知るには十分と考えている。

 農業祖収益や農業所得だけを見ると、それぞれの経営によって差があることは解るが、それらをわたしが個人的に計算してみた時間当たり所得で比較してみると、それほど差がないことが解る。強いて言えば、野菜経営の施設経営が時間当たり約100円高いというのは「大差」と見られるかもしれない。農業所得という面で見ても路地あたりに比較するとずいぶんの差が出ているから、施設野菜には効率的な面があるかもしれない。ただしこの時間当たり所得を見て思うのは、そこらのアルバイト料より安いということである。これが水稲との複合であったり、他の収入が見込まれるものならともかく、この金額だけを見た場合、経営は苦しい、というよりも所得が少ないということになるだろう。さまざまな保障制度を含めた比較ではないので一概には言えないが、たとえば年収が250万円程度の人でも時間当たりにすると1,302円となる(2,500万÷240日÷8時間)。500万円なら倍となるわけで、所得の低い人でも農業経営者よりも時間当たりにするとそこそこの収入になるということになる。

 1人当りの作業日数を⑧欄に表示しているが、これはそれぞれの類型で差がある。サラリーマンを約240日とすれば、路地野菜や果樹、路地の花卉はその値を下回ることになる。その空き時間は別の仕事ができるということになるのだろうが、確かにサラリーマンに比較すると、安定しないことになることは確かである。ようは、空き時間の生業としてどう計画するかということで、外へ出て稼ぎをすれば、そちらに縛られるようになって、なかなか農業は成立しなくなる。かつてならそんな暮らし方を多くの人がしていただろうから、どうということもなかったかもしれないが、今はそうした比較が容易にできる時代である。とすれば、安定を求めて給料は少なくても外へ稼ぎに出るという方を選んでも仕方ないという背景になる。

 それぞれの農業所得を捉えてみると、例えばであるが、路地野菜の場合、作業日数355日で所得が約190万円である。ほぼ1年休みなく働いてもこの程度なのである。ちまたには1億稼ぐ果樹農家があるとか、花卉農家があるなどと聞くが、あくまでも特定の人たちであって、平均的にはこんなものなのだろうかと、少し疑問を持ちながらその数字にあらためて農業経営の厳しさを見る。それでも家族労働として捉えれば、施設野菜や施設の花卉の所得であれば、人並みの生活はできそうである。ただしその作業日数を見ると、それなりの忙しさであることはいうまでもない。かつて複合生業をしてきた農家、しかし、そこには不安定感があるに違いないし、それを楽しもうなどという気になどなれるはずもない。
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