Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

身の回りが見えていない人々

2008-03-02 17:54:49 | 農村環境
 県世論調査協会と県環境保全協会が共同して行った川などの「水辺環境」に関する県民の意識調査が新聞に掲載された。その内容は、この10年間での水辺環境の変化について触れたもので、①嫌なにおいがするようになったか、②ごみが増えたか、③魚などの生き物が減ったか、④水遊びができる場所が減ったか、⑤危険な箇所が増えたか、というものである。生の調査の質問が紹介されていないのでなんともいえないのだが、このような聞き方をすると意図的に悪い方向に回答が多くなるものである。お解かりのように、嫌なにおいがするようになったのだろうか、などと聞かれれば、「はい」と答えてしまうような気がするのだ。これをもって意識調査と言われるとちょっとというか、だいぶ疑問がある。これと同じようなことをこの日記上で記したような気がするのだが、その内容が何であったかは記憶にない。どれもこれも悪い方向になったかどうかという聞き方なのだからいけない。



 その疑問に触れる前にその結果に触れておくことにする。まず①は「はい」15%、「いいえ」53%とこの回答は悪くなったかと聞いて「いいえ」の方が多い。匂いというものはそれほど変化していないということを教えてくれる。次からの4項目に問題が見えてくる。②については「はい」56%、「いいえ」25%となっているから圧倒的に「ゴミが増えた」という意識をもっている。③は「はい」56%、「いいえ」13%、④は「はい」59%、「いいえ」13%、そして⑤は「はい」「いいえ」ともに30%と拮抗している。

 県内の20歳以上の男女千人を対象に郵送で行ったという調査。約59%からの回答を得たという。この10年間ということは、平成9年ころから最近までの10年ということになる。果たしてその認識は正しいだろうか、ということである。水辺環境ということはわたしたちの身のまわりでは河川が主になる。昔に比較すると、明らかに最近の河川整備は人が接しやすい整備をしている。だから「水遊びかできる場所が減った」という意識は明らかに間違いである。にもかかわらずそういう答えが圧倒的に多いということは、回答者の多くが10年という数字をどれだけ意識して回答しているかといことである。この10という数字が20であったならまた別である。しかし10という数字でたどってみると、この10年の変化は、その前の時代の変化に比較すれば小さいものである。危険な箇所の質問についても、果たしてどういう部分をもって危険な箇所というのだろう。回答前に記憶の中で数えてみただろうか。そして、生物の減少というのもなんともいえない。具体的にどういう生物が減ったなどとほとんどの人が回答できないはずである。ようは今の人たちで、そうした環境を具体的に体感している人は少ないはずだ。具体的に水辺環境に触れていなければ、そんな回答などできるものでもないし、雰囲気で捉えている人も少なくないはずである。したがって質問の仕方も悪いが、その内容もこの10年というスパンでは意図がよく見えないし、信憑性は低いだろう。

 記事では「自然豊かな水辺を求める志向の強いことが分かった」などというが、むしろ逆ではないだろうか。いかに水辺を認識していない人が多いかが解ったともいえる。そして、「どのような水辺が望ましいか」を二つまで選ぶ質問で「ホタルやトンボがいる空間」に60%で多く、ついで「人の手を加えない」「花や緑が豊か」が多いという。この回答から読み取れるものは別のもののように思うのだが違うだろうか。おそらく回答した多くの人たちが、この10年間の身のまわりの環境に対峙してほとんど進歩していないといえる。
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