Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

市街地における専業農家の秘密

2006-11-18 11:58:05 | ひとから学ぶ
 「市街地における専業農家の秘密」と題した飯田市鼎中学2年生の作品を見てみよう。

 かつては農村地帯ではあったものの、近年住宅が立ち並ぶようになった市街地においても、いまだに農業を専業として営んでいる家があることに、どういう農業をしているのか、そんなところに焦点をあてた作品である。①専業農家としてやっていける理由と、②市街地での農業を続けられる理由の二つを解明することを目的としており、土地利用とそれらをいつ収穫しているか、というところまでを生産暦風に一年を追っていっているわけである。倉田さんという農家から聞き取りながらまとめており、その家で作っている作物は、モモ4品種、リンゴ4品種、ブドウ4品種、柿というように果樹が主である。1町2反という土地に、こうした果樹を生産しており、前期4種の果物はほぼ同じくらいの面積に植えられている。

 考察のなかで、①価格の高い農作物を作っているのではないか、と触れているが、さすがに値段などは子どもとはいえ教えてもらえなかったようだ。しかし、生産している品種から高級品であるという印象は持ったようだ。そして、②狭い土地の有効利用をしているのではないか、と触れている。傾斜地には柿を作り、平地にはブドウを作る。ブドウはリンゴやモモに比較すると消毒による散布の気を使わなくてもよいという。三つ目として③1年間を通して作業を工夫して行なっているのではないか、ととりあげ、作業の工程の中で生産物の出荷時期がずれるように組み合わせているという。作業を分散することにより、家族労働力によって少ない人数で作業をこなしているというのである。以上は必ずしも新鮮な工夫とは見えないかもしれないが、あらためて専業農家の姿を確認することができたわけだ。最近、消毒に関してはさらに厳しい状況が課せられるようになった。収穫時期の生産物に、隣の生産物への消毒がかかってはいけないわけだ。ただでさえ消毒は飛散する。そんな状況下となれば、多品種の生産物を隣り合わせて植え付けることは難しくなる。先日も近所の方とそんな話をしたが、小規模農業者にとってのメリットであった土地の有効利用は、消毒ということを考慮すると、これからは難しいという。ますますそうした農業を営もうという人たちに追い討ちをかけることとなる。

 まとめとして、①家庭内労働、②果樹に生産物を絞る、③販売方法として直販に力を入れる、④同じ果物でも数種類の品種を組み合わせて時期ずらすことで自然災害などによる影響を最小限にする、というような方法で市街地にありながら専業として成り立たせている、という結果を得たようだ。最後にも触れているが、住宅地に隣接しているということは、第三者との作業上の諸問題を解決していかなくてはならない。前述したように果物には農薬散布がつきまとう。その環境をどう解消していくかは、市街地に限らずこれからの農家の大きな課題でもある。企業化してゆく農業、という環境を見れば、第三者への対応はますます厳しくなるだろう。そんなことを思いながら、この市街地の専業農家を話題にしてみた。

 郡総合展覧会作品から
 ①交差点のモラル
 ②気温と出かける人の気持ち
 ③八幡商店街の移り変わり
 ④屋号から見る北市場の歴史
 ⑤自磨中間報告
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